鞍馬の神修も一日の始まりは皆揃って祝詞奏上する夕拝から始まるらしい。私たちは朝なので朝拝だけれど、こっちは夕方なので夕拝だ。
時差ボケ対策で一日の調整期間があったとはいえ、神修勢の生徒たちはかなり眠たそうだ。ガクガクと船を漕ぐ生徒たちに、鞍馬の神修の先生たちは優しく肩を叩く。
普段なら朝拝中に居眠りなんて言語道断、即罰則行きなのだけれど初日のこれは恒例の景色らしい。私も五回目の欠伸を噛み殺したところで、やっと夕拝が終わってホームルーム教室へ促された。
学校の作りも神修とよく似ていて、ただ私たちの学校と比べると一回りは小さい印象だ。
鞍馬の神修へ通える妖は一族の中で一人だけ、神託を受けて次期宮司に選ばれている妖か時期宮司候補の妖だ。そうなると一学年に一クラス程度しか学生が集まらず、教室の数も少ないのだとか。
鞍馬の神修の高等部二年も、今年は信乃くんたち三人だけで一クラスだ。
昨日のうちに信乃くんたちが用意してくれていた席について朝のホームルームを待つ。
「そういえば、一学期にうちに来た時に担任の先生はなかなかの変わり者だって言ってなかった?」
嘉正くんが思い出したようにそう口を開く。
確かに薫先生のめちゃくちゃなやり方を見て、信乃くんが「うちもなかなかやけど」と零していた気がする。
「あー……まぁ今に分かるわ」
はは、と笑った信乃くん。
言い方に含みがあるのは気のせいだろうか。
その時、教室の前の扉がガラリと開いた。



