鞍馬の神修と私たちの神修は姉妹校の関係にある。ただ鞍馬の神修に通う学生は人ではなく妖なので、古典や数学といった一般科目ですら学ぶ内容は異なっている。

明日から始まる学校生活に向けて、必要な説明や教科書などが配られた私達は早速広間でそれらを確認した。


「なぁ、これがお前らの古典なのか……?」

「おう。人間はあんまり馴染みないらしいな、神代文字(じんだいもじ)


思わずスマホで神代文字と調べた。曰く、漢字の伝来するよりも前の日本で使われていた文字らしい。

私達も古典の授業で平安時代の書物『枕草子』や『竹取物語』を扱うけれど、気合いがあれば何とか読めるミミズ文字だ。

配られた教科書を見る。気合いがあっても読めそうにない。どちらかと言うと象形文字に近い気もする。

教科書の内容は読めば大抵理解できるあの嘉正くんと恵衣くんですら固まっている。


「古典もだけど数学もなかなかヤバいね……」


ズレたメガネを押し上げながら、数学の教科書をめくった来光くんがそう言う。


「これ和算(わさん)って言うんだっけ?」

「おう。幽世じゃ和算が一般的やな。若いヤツらは西洋数学の方が便利や言うてそっちも勉強しとるみたいやけど」


なんというかもう、何から何まで全部違う。基礎も常識も全く別物で、まるで異世界にでも飛ばされた気分だ。


「俺、こっちの神修じゃ落ちこぼれになりそう」


引きっった顔で嘉正くんがそうこぼす。