朝方特有の肌寒さに身震いして目を覚ました。いつの間にか眠っていたらしい。
のっそりと体を起こすと、他のみんなも眠っていた。あちこちから寝息が聞こえる。
御簾から差し込む光が白い。傍に転がっていたスマホの画面を叩くと午前三時を指している。眠っている間に夜が明けたらしい。
暖簾の外を眺めようと立ち上がったその時。
「そこ、踏むぞ」
潜められた声で注意されて慌てて差し出した足を引っこめる。
「うーん……」という唸り声とともに、脱ぎ捨てられた羽織の下から慶賀くんが現れる。危うく慶賀くんの顔を踏んづけるところだった。
顔を上げると壁に寄り掛って本を読んでいた恵衣くんと目が合った。
「恵衣くん、起きてたの?」
「こんな爆音の中で眠れるかよ」
がごごご、といびきをかく泰紀くんのおしりに蹴りを入れて顔を顰める。思わず吹き出してしまった。
眠るみんなを踏まないように注意しながら恵衣くんに歩み寄る。そっと御簾を持ち上げて外を見た。
まだどこかの森の奥を走っていた。
「もうすぐ着くぞ」
眩しそうに目を細め窓の外を見た恵衣くんがそう言った。
え?と首を傾げる。
「行き先は言われてないよね? どうして分かるの?」
「お前が起きる少し前、鬼脈を走っていた時にまなびの社の鬼門が見えた。俺たちは今京都にいる」
まなびの社、一年の時に神社実習でお世話になったお社だ。確かにまなびの社は京都にある。
「この時期に高等部の学生全員を乗せて向かう先は、ひとつだろ」