出発します、という掛け声とともに車に滑り込んだ。

時間きっかりに動き出した車の中で学生たちのゼィハァと苦しげな呼吸があちこちから聞こえる。

ドサドサとその場に荷物を落とした私達も崩れるように座り込む。


「一体何なのさ……!?」


来光くんの悲鳴に皆がうんうんと頷く。

遅い時間にいきなり集められて車に詰め込まれ、行き先不明なまま出発だなんてこれまで一度もなかった。

泊まりがけで実習? 高等部三学年で?

今までそんな実習なんて一度もなかったし、そもそもそんな大きなイベントがあるなら前もって連絡があるはずだ。

案の定あちこちで不満の声が上がる。理由を聞こうにも、訳を知っている先生は車に同乗しておらず、皆は納得いかない顔で渋々自分たちの席を陣取り始めた。

私達も空いていた場所に腰を下ろす。


「この車、どこに向かってるんだ?」

「私達どこに連れていかれるんだろ……」


何となく潜められた声で学生たちは不安を囁き合う。


「まぁそのうち目的地に着くだろうし、そしたらわかるだろ」


ふわぁとひとつ欠伸をした泰紀くんはその場に寝転がった。

泰紀くんの言う通りなんだけれど、なんだか妙に落ち着かない。

御簾を少しだけ開けて外の様子を伺う。空には月が昇っている。車は深い森の中を駆け抜けていった。