事件が起きたのはそんな話をして一時間も経っていない頃だった。
広間は夕飯を求めてやってきた学生たちで溢れかえっており、私達もいつもの定位置でお膳を並べて引き続き中止になった異文化交流学習について喋っていた。
「俺、向こうの槍術部と試合すんの楽しみにしてたんだけどなぁ」
「何で急に中止にしたんだろうね。急に中止にするならするで、普通は学生たちに理由を説明するはずなのに」
納得いかない顔をするみんなは、ため息を零しながら炊き込みご飯を咀嚼する。
はぁ、と何度目かのため息が重なったその時、広間の前の方から「静かにー!」と叫ぶ声が聞こえて皆はパッと顔を上げた。
少し首を伸ばして声が聞こえた方へ顔を向ける。
広間の入口からゾロゾロと中へ入ってくるのは、高等部を担任している先生たちだった。もちろん薫先生の姿もある。
「何だろ?」「先生たち勢揃いじゃん」「仰々しいね」「誰かが何かやらかしたんじゃない?」
生徒たちのざわめき声は「静かに!」という先生の一括で静まり返った。
「高等部一年、二年、三年の学生は十分後の七時三十五分までに、一週間分の荷造りをして車乗り場へ集合してください」
十秒くらいの沈黙の後、広間は弾けるように騒がしくなった。
皆驚いた顔でお互いの様子を伺う。