『え、お前らこっち来やんの?』

その日の放課後。今日は職員会議でどの部活動も休みになり、私たちはいつものたまり場である反橋の下へやってきた。


「今日薫センセーに聞いたら、中止だーって!」

「お前ら何か聞いてない?」


そう言ってみんなはひとつの画面を覗き込む。慶賀くんのスマホの画面に映し出された三人は、一学期に知り合った鞍馬の神修に通う学生だ。


『そういえば、こっちでも異文化交流学習の話は上がってないな』


そう答えた黒髪の男の子は、八瀬童子(やせどうじ)と呼ばれる鬼の妖鬼市(きいち)くんだ。

鬼市くんとは一年の時の神社実習でも二度ほど会っている。


『俺が、暴走したから?』

『それは関係ないやろ。お前がそっちの交流学習に参加するって時点で、暴走するリスクはそっちの先生らにも説明してるやろうし』


眉根を寄せた(ろう)くんの頭を小突いたのは、信田妻狐(しのだづまぎつね)一族の信乃(しの)くん。二人は妖狐とよばれる妖で、同じく交流学習へ参加して知り合ったあやかしの友達だ。


「お前らも何も聞いてねぇのか〜。薫センセーも中止としか教えてくれないんだよな」

「何か言えない事情でもあるのかな」


言えない事情。

来光くんのその呟きに、薫先生の言葉が過った。