黎栄に引っ張られてまた地下牢へ戻ってきた。中へ放り込まれへなへなと力なく座り込む。格子の扉を閉じた黎栄は外から中へ蝋燭を差し入れると、誉には目もくれずスタスタと戻って行った。
呆然とロウソクの揺れる炎を見つめる。頭が何一つ整理できないまま話だけがどんどん進んでいく感覚に泣きたくなる。
私は妖怪に誘拐されて妖怪の住む世界に来てしまって、通行手形であるお面をつけていなかったから肉体と魂が乖離してしまった。私の身体は行方不明で、お面をつけていなかったからおそらく罰が下る。きっと明日には"本庁"というところに連れていかれて酷い目にあうんだ。
頭の中を整理しようとして絶望だけが深まった。きゅっと唇を結んで膝を抱える。
もう嫌だ、訳が分からない。家に帰りたい。本当なら今頃お母さんのカレーを食べてお気に入りのバスボムをいれたお風呂に浸かってふわふわの布団にくるまっていたはずだ。そうだ、これはきっと都合の悪い夢だ。振られたショックで悪い夢でも見ているんだ。
頬を抓った。ちゃんと痛い。頭を叩いた。ちゃんと痛い。ちゃんと痛いだけで目の前の景色はずっと変わらず冷たい格子のままだった。
「夢って言ってよぉ……」
泣き言と共に涙が溢れる。
知らない場所、知らない男の前だったからずっと気を張っていたらしい。一度糸が切れるともう止まらない。膝に顔を埋め、隙間風から逃げるように身を小さくして丸まった。
夢と現と狭間で寒さに震えていると、温かい何かに包み込まれた。懐かしい香りがする。その匂いに包まれていると無性に泣きたい気持ちになる。縋るようにそれに手を伸ばせば、何かがするりと頬を撫でた。心地よい感覚に強張っていた体から力が抜けていく。誉はやがて深い眠りについた。
呆然とロウソクの揺れる炎を見つめる。頭が何一つ整理できないまま話だけがどんどん進んでいく感覚に泣きたくなる。
私は妖怪に誘拐されて妖怪の住む世界に来てしまって、通行手形であるお面をつけていなかったから肉体と魂が乖離してしまった。私の身体は行方不明で、お面をつけていなかったからおそらく罰が下る。きっと明日には"本庁"というところに連れていかれて酷い目にあうんだ。
頭の中を整理しようとして絶望だけが深まった。きゅっと唇を結んで膝を抱える。
もう嫌だ、訳が分からない。家に帰りたい。本当なら今頃お母さんのカレーを食べてお気に入りのバスボムをいれたお風呂に浸かってふわふわの布団にくるまっていたはずだ。そうだ、これはきっと都合の悪い夢だ。振られたショックで悪い夢でも見ているんだ。
頬を抓った。ちゃんと痛い。頭を叩いた。ちゃんと痛い。ちゃんと痛いだけで目の前の景色はずっと変わらず冷たい格子のままだった。
「夢って言ってよぉ……」
泣き言と共に涙が溢れる。
知らない場所、知らない男の前だったからずっと気を張っていたらしい。一度糸が切れるともう止まらない。膝に顔を埋め、隙間風から逃げるように身を小さくして丸まった。
夢と現と狭間で寒さに震えていると、温かい何かに包み込まれた。懐かしい香りがする。その匂いに包まれていると無性に泣きたい気持ちになる。縋るようにそれに手を伸ばせば、何かがするりと頬を撫でた。心地よい感覚に強張っていた体から力が抜けていく。誉はやがて深い眠りについた。