十一月も下旬になれば、一気に冷え込む。

 外に出てはぁ、と息を吐けば、白い息が見えた。雪がちらちらと見えるので、明日の心配をしてしまう。

「あれ、けーこばあば、おでかけ?」

美咲(みさき)ちゃん。ちょっと買い物にね」
「あ、じゃあ車に乗って。私も買い物に行くところだから」

 恵子(けいこ)は一瞬悩んで、お言葉に甘えることにした。美咲の車に乗って、近所のスーパーで買い物をした。

 いろいろと考えて、明日雪が積もったら買い出しにいけないと思い、今日のうちにたくさん食料を買い込んだ。美咲のおかげで予定よりも大量に。

「わざわざありがとうねぇ」
「いえいえ。けーこばあばにはいっぱいお世話になってるからね」

 美咲は恵子が買ったものを持って、車に詰め込む。それから自身の買い物を終わらせたのを見て、恵子は首を傾げた。

「お茶だけだったの?」
「うん、ちょうどお茶切らしちゃって。冬ってほうじ茶飲みたくなるんだぁ」
「ほうじ茶美味しいものね」

 車に乗り込んで、美咲が買ったものについて(たず)ねる恵子。

 そして、きっと美咲は恵子が外に出るのを見て、近付いて来てくれたのだろうと思い、彼女の気遣いに感謝した。

「美咲ちゃん、時間ある?」
「今日は休みだからあるよ」
「なら、うちでご飯食べていかない? 今日は寒いから、ひっつみにしようと思うの」
「いいね、ひっつみ! 楽しみー」

 雪が降るほどの寒さだ。こういう寒い日には、身体の中からぽかぽかと温まるものを食べたくなる。

「私も手伝うよ」
「そうね、ふたりで作れば早いもの」

 車の中で会話を楽しみながら、美咲は恵子の家の前に車を止めた。それから、恵子が買ったものを持つ。

「けーこばあばは鍵を開けてね」
「悪いわねぇ」
「いえいえ」

 恵子は家の鍵を開け、がちゃりと扉を開く。美咲が中に入り、荷物を置いた。たくさん買ったから重かったろうと思い、「ありがとう」と声をかけると美咲は軽く手を振りながら「気にしないで」と微笑んだ。

「車はどうする?」
「お酒を飲まないなら、このままでもいいけど……」
「じゃあこのままで。けーこばあばのところ、私有地広くていいね」
「そう?」

 そんな会話をしながら、手洗いうがいをしてエプロンを身につける。今から作ればお昼には食べられるだろう。

 買ったものを先に冷蔵庫に入れ、早速作り始める。

「それじゃあ、作りましょうか」

 恵子の言葉に、美咲はこくりとうなずいた。

 まずは鍋に水を入れて火をかける。沸騰するまでのあいだ、野菜を用意する。ひっつみに入れる野菜はなんでも構わない。余りものの野菜でも美味しくなるのがひっつみだ。