ピーピーと炊飯器が鳴る。どうやら炊きあがったようだ。
急いでしゃもじを用意し、軽く水に濡らしてから炊飯器の蓋を開けると、ぶわっと勢いよく湯気が立ちのぼる。
そして、それに混じった松茸の芳醇な香り。
「うーん、良い香り。美味しそうに炊けたねぇ」
ざくざくとしゃもじで十字に切り、素早くかき混ぜる。たっぷり松茸をいれたので、ご飯全体に松茸の旨味がしみ込んでいるだろう。
炊飯器の蓋を閉じると、くぅ、と腹の虫が鳴いた。
「……ちょっと早いけど、食べちゃいましょうか」
いそいそと茶碗を持ち、最初に勇の茶碗にご飯を盛る。
「あなた、今年も秋の恵みをいただきましたよ」
そっと遺影の傍に茶碗を置き、手を合わせた。
「……あなたも、よく採って来てくれましたねぇ」
しみじみと昔を懐かしむようにつぶやくと、恵子は自身の分も茶碗に盛った。
「……そういえば、昨日つけたお刺身があったわねぇ」
サーモンをポン酢で漬けていたことを思い出し、それも一緒に食べようと冷蔵庫から取り出す。
お皿に並べ、インスタントの味噌汁を用意して椅子に座り、「いただきます」と両手を合わせて箸を手に取る。
まずは松茸ご飯を一口。
「うーん。美味しくできた」
お米の硬さも味も自分好みにできたことに、恵子はふふっと微笑む。少々のもち米を入れているので、少しもっちりとした食感が混ざっている。シャキシ
ャキとした松茸の食感も良い。
ポン酢に漬けたサーモンも口に運ぶ。
「ポン酢漬けはさっぱりしていて良いわねぇ。大葉も入れて正解だったわぁ」
ちなみにポン酢漬けはマグロを漬けても美味しい。
秋になったとはいえ、まだまだ暑い。ゆっくりと息を吐いて窓の外へ視線を向けた。
「……栗拾いにも行かないとねぇ」
美咲と芽衣を誘ってみようかと考えながら、もぐもぐと食事を進める。
日中だけ暑く、朝夕はだいぶ涼しくなってきた。
「春もだけど、秋も着るものに悩むのよねぇ」
ぽつりとつぶやいてから、味噌汁に口をつける。やっぱり美味しい、とぼんやり考えながら、ふと周りを見渡す。
「……最近は美咲ちゃんと芽衣ちゃんが一緒に食べてくれたから、このテーブルも広く見えるわねぇ」
勇と子どもたちがいたときは、狭いくらいだったのにと眉を下げた。
「……まぁ、ひとりは気楽なのだけど」
自分のことだけをすれば良いから。恵子はぱくぱくと松茸ご飯を食べ進め――一膳食べ終え、少し悩んだが、お代わりをすることに。
「そうそう、確か……」
ブラックペッパーを取り出して、松茸ご飯の上にかける。この食べ方は娘が教えてくれたものだ。
「あら、これはこれで合うわね……!」
ピリッとした辛味がアクセントになり、とても美味しい。
「うーん、あの子はいったいどこでこういうことを覚えるのかしら……?」
料理教室にでも通っているのだろうか、と首を捻りながらも、恵子はその日の夕食を美味しく食べ終えた。
急いでしゃもじを用意し、軽く水に濡らしてから炊飯器の蓋を開けると、ぶわっと勢いよく湯気が立ちのぼる。
そして、それに混じった松茸の芳醇な香り。
「うーん、良い香り。美味しそうに炊けたねぇ」
ざくざくとしゃもじで十字に切り、素早くかき混ぜる。たっぷり松茸をいれたので、ご飯全体に松茸の旨味がしみ込んでいるだろう。
炊飯器の蓋を閉じると、くぅ、と腹の虫が鳴いた。
「……ちょっと早いけど、食べちゃいましょうか」
いそいそと茶碗を持ち、最初に勇の茶碗にご飯を盛る。
「あなた、今年も秋の恵みをいただきましたよ」
そっと遺影の傍に茶碗を置き、手を合わせた。
「……あなたも、よく採って来てくれましたねぇ」
しみじみと昔を懐かしむようにつぶやくと、恵子は自身の分も茶碗に盛った。
「……そういえば、昨日つけたお刺身があったわねぇ」
サーモンをポン酢で漬けていたことを思い出し、それも一緒に食べようと冷蔵庫から取り出す。
お皿に並べ、インスタントの味噌汁を用意して椅子に座り、「いただきます」と両手を合わせて箸を手に取る。
まずは松茸ご飯を一口。
「うーん。美味しくできた」
お米の硬さも味も自分好みにできたことに、恵子はふふっと微笑む。少々のもち米を入れているので、少しもっちりとした食感が混ざっている。シャキシ
ャキとした松茸の食感も良い。
ポン酢に漬けたサーモンも口に運ぶ。
「ポン酢漬けはさっぱりしていて良いわねぇ。大葉も入れて正解だったわぁ」
ちなみにポン酢漬けはマグロを漬けても美味しい。
秋になったとはいえ、まだまだ暑い。ゆっくりと息を吐いて窓の外へ視線を向けた。
「……栗拾いにも行かないとねぇ」
美咲と芽衣を誘ってみようかと考えながら、もぐもぐと食事を進める。
日中だけ暑く、朝夕はだいぶ涼しくなってきた。
「春もだけど、秋も着るものに悩むのよねぇ」
ぽつりとつぶやいてから、味噌汁に口をつける。やっぱり美味しい、とぼんやり考えながら、ふと周りを見渡す。
「……最近は美咲ちゃんと芽衣ちゃんが一緒に食べてくれたから、このテーブルも広く見えるわねぇ」
勇と子どもたちがいたときは、狭いくらいだったのにと眉を下げた。
「……まぁ、ひとりは気楽なのだけど」
自分のことだけをすれば良いから。恵子はぱくぱくと松茸ご飯を食べ進め――一膳食べ終え、少し悩んだが、お代わりをすることに。
「そうそう、確か……」
ブラックペッパーを取り出して、松茸ご飯の上にかける。この食べ方は娘が教えてくれたものだ。
「あら、これはこれで合うわね……!」
ピリッとした辛味がアクセントになり、とても美味しい。
「うーん、あの子はいったいどこでこういうことを覚えるのかしら……?」
料理教室にでも通っているのだろうか、と首を捻りながらも、恵子はその日の夕食を美味しく食べ終えた。