ホイル焼きも簡単だ。ほぐした松茸をアルミホイルに入れて、少々の日本酒(調理酒)を入れ丸めてフライパンに置き、少々の水を入れて火にかけ蓋をしてしばらく放置で出来上がる。

 アルミホイルを開けるときは火傷に注意だ。

 そっと開けると湯気に込められた松茸の香りが鼻腔をくすぐる。それに醤油をかけて食べると、思わず日本酒がほしくなってしまうほどの旨味が口の中に広がる。

「……美咲(みさき)ちゃんなら一升瓶いけそうね」

 ぽつりとつぶやいて、くすくすと笑う。飲んだことはないが、松茸酒というものもあるし、松茸はいろいろと便利なきのこなのだ。

「あとはやっぱり松茸の天ぷらかしら。そばやうどんと合わせると美味しいのよね」

 舞茸の天ぷらと合わせるのもいい。きのこは天ぷらにしても美味しいから。

 それにしても、田舎のごちそうは天ぷらが多いような気がして、恵子(けいこ)は肩をすくめる。

「……実際天ぷらにするのが一番楽なのよね……」

 山菜の苦味だって、天ぷらにすることでだいぶ食べやすい苦味になるので、ついつい天ぷらにしがちだ。ついでに言えば、秋の味覚でもあるさつまいもだって、天ぷらにすれば子どもたちは喜んで食べた。

「ふかし芋はあんまり食べなかったのにねぇ。まぁ、大人になってから食べるようになったけど」

 秋の味覚とはまったく関係ないが、南部せんべいを天ぷらにするのもお勧めだ。

 だが、これは揚げたて食べないといけない。なぜなら、冷えると硬くなるからだ。ビスケットを天ぷらにする地域もあるらしい。

「小麦と小麦……まぁ、合わないわけもないのよね」

 子どもたちが食べていたことを思い出しながら、恵子は松茸ご飯の準備を終える。

 今回はお米を三合用意した。

「美味しく炊けますように」

 めんつゆで味をつけるので、あまり心配はしていない。

 ちなみに、味付けはシンプルに醤油と日本酒という家庭もある。これも家庭によってまったく違うので、いろいろと試して自分の好みの味を探すのが、田舎暮らしの良いところでもある。

「都会だと『買う』から、あんまり試せないでしょうし」

 田舎だと『お裾分け』ということで松茸は『もらうもの』だ。自分で採れる人にとっては『採るもの』だろう。だが、それができるのは田舎だから、とも思う。

 そもそも採れたらスーパーや松茸小屋に売るのが主流。傘が開きすぎたものは安く買われやすいので、こうしてお裾分けとしてもらうことが多い。

 だが、傘が開いていても松茸は松茸。そもそも松茸ご飯にするには、傘が開いたもののほうが便利でもある。大量に入れて松茸のエキスをたっぷりとご飯にしみ込ませる。

 それだけで、もう『ごちそう』だ。

「秋は恵みが多くてありがたいわぁ」

 と、つぶやきながら、ぽちっと炊飯ボタンを押した。