やはり、自分に尊の嫁は務まらないと、深く思ってしまった。

周りの反対を押し切り、尊の気も知らないで結婚してしまったことに罪悪感を覚える。


(……今晩、旦那様と話がしたい)


これで、終わりにしよう。


そう思った小春は、夜にどうしても時間が欲しいとねだった。

初めて、許可をもらえた。




そして、月夜が美しい宵。


「だ、旦那様……」

「なんだ」

「……私と、離縁していただけませんか……?」


泣かないように、初恋を殺して笑顔を無理やり作る。


「……なぜだ。そんなにも私が憎いか」

「え……?憎い、どうしてですか……?」

「お前には故郷でとても仲のいい雪男がいたのだろう?そいつのことが好きなのか、俺のことなんか眼中にないのだな」


キリッと、ゴミをみるような目で見つめられて、視界がぐるぐるとぼやけだした。

確かに、雪男の幼なじみがいた。だが、なぜ誤解されているのかわからない。


もしかして、由緒ある家に嫁いだ者が浮ついた心を持っていたと誤解されて、怒ってしまったのだろうか。


「そんなこと……」

「お前なんか大嫌いだ。もう2度と顔を見せるな」

「っ……!!」