朝日の柔らかな光に包まれるキッチン。パチパチと音を立てて焼ける目玉焼き。鼻に広がるトーストの香り。
ラジオ代わりにしているテレビの天気予報によると、今日は夏日になるらしい。
「今日から夏か....嫌だなぁ....」
俺はボソッとため息混じりにそう呟く。
どうしても夏は苦手だ。年々暑くなるし日焼けするしであんまり良い印象が無い。
今年の夏はあんまり暑くならないといいな。そんなことを考えながら作り終えた二人分の朝食を食卓に並べ、チラッと壁の時計を見ると七時過ぎ。部屋で寝ている春舞を起こす時間だ。
キッチンを抜け春舞の部屋に入ると、ベットで寝ている春舞がすぐに目に入った。
色白な肌に長いまつ毛。
通った鼻筋に桜色の唇。
誰もが羨むようなパーツで構成された春舞の綺麗な寝顔がカーテンから差し込む朝日に照らされて、より一層美しさを際立たせている。
毎朝見ているはずの春舞の寝顔に未だに見惚れてしまいそうになるが、今は春舞を起こすことが先だ。
「朝だぞ春舞。起きろー」
....やっぱり起きない。
正直声かけくらいでは起きてくれないことは分かっていたから、俺は春舞の側に行き頬へ軽い口付けをした。
頬から口を離すと春舞の綺麗な目がパチっと開き、目が合う。春舞は俺の存在に気がつくと嬉しそうな顔を浮かべながら
「蓮、おはよぉ」と、とろんと眠気の残った声で俺に挨拶をした。
「おはよ。朝ご飯出来てるから顔洗って早く来いよ」
「はーい」
春舞は眠そうに返事をしながらのそのそとした動きでベットから降りて、そのまま洗面所へと歩いていった。
春舞が部屋から出て行ったのを確認して、俺は「ふぅ....」と息を吐いた。そして、高まった心拍数を落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸をする。
同性に、幼馴染に、その上誰もが羨むほどに整った春舞の顔に口付けをするのは毎回ドキドキしてしまうし、そのドキドキが顔に出てないか不安で余計ドキドキしてしまう。
だから毎回春舞が部屋から出て行った後に呼吸を整えてから食卓に向かうことにしている。
春舞を起こす時に口付けをするようになったのは一ヶ月前、放課後の教室で春舞に告白をされてからだ。
春舞とは小さい頃からずっと親友だったし、親友より上の関係になることはないと思ってたから、春舞からの告白は本当に驚いた。
正直俺も春舞のことは好きだったが、親友としての好きなのか恋愛感情の好きかは分からなかった。 だからきっと、春舞もどっちの好きか分かってないんじゃないかと伝えて断ったのだが....
「じゃあさ、一ヶ月間恋人っぽいことをしようよ。一ヶ月経って何も無かったら恋愛感情無しってことでまた振ってくれて良いからさ」
春舞がそんな提案をしてきた。
確かにそれは良い考えかもしれない。お互いの好きが恋愛感情かどうか確認出来るし、告白の返事も一ヶ月間考えられると思い俺は二つ返事で了承した。
それから一ヶ月間、俺と春舞のお試しの恋人期間が始まった。
俺の家に春舞が泊まったりデートスポットに二人で行ってみたり。朝の口付けもその一つだ。
そして、その一ヶ月間の恋人期間は今日で終わりを迎える。
「一ヶ月、か....」
春舞に告白をされた日から今日までの一ヶ月間はあっという間だった気がする。
毎日春舞を起こして、一緒に朝ご飯を食べて、一緒に学校行って、一緒に帰って、一緒に晩ご飯を食べて....
この一ヶ月間は今までの人生の中で間違いなく充実した時間だったと思う。
だからこそ、今日中に答えを出さないといけない。一ヶ月前のように放課後の教室で、春舞からの告白の返事を伝えないといけない。
「よし」
俺は気持ちを切り替えるためにパンっと軽く頬を叩くと食卓に向かい、春舞が来るのを待つことにした。
「蓮、お待たせー」
と、しばらくして顔を洗い終えた春舞が食卓に座る。
「じゃあ食べるか」
「うん!いただきまーす」
「いただきます」
二人で手を合わせそう言うと、春舞はトーストにイチゴジャムをたっぷり塗りはじめる。春舞のいつもの食べ方だ。そして一口かじると幸せそうな顔を浮かべている。
俺はそんな幸せそうな顔を浮かべる春舞を見ながらトーストにバターだけを塗る。
「蓮、今日はいつもより食べる量が少ないね?調子悪い?」
「いや、調子は別に悪くないよ」
俺はトーストを一口かじってからそう答える。
春舞に告白の返事をしなきゃって朝から考えてたから食欲が湧かない、なんて言えるはずがない。
その後は他愛もない話をしながら朝食を食べ進めた。
そして、朝食を食べ終えた俺達は学校に行く準備をして、玄関に向かう。
「ねぇ、蓮」
玄関で二人並んで靴を履いていると、春舞が手を止めて俺の方を見て言った。
「ん?」
「今日で告白してから一ヶ月だね」
「そうだな」
「放課後、告白の返事楽しみにしてるからね」
「....うん、分かってる」
俺がそう答えると、春舞は幸せそうな笑顔を浮かべた。
「ちゃんと覚えててくれて良かった。じゃあ、行こっか!」
そしてそのまま春舞は俺の手を引いて玄関から外へ出る。俺はそんな春舞に引っ張られながら高校へと向かった。
それから放課後になるまでの時間はあっという間で、気がつけば教室は俺と春舞の2人きりになっていた。静かな教室に遠くの運動部の声が響く。
「じゃあ蓮、告白の返事聞かせてくれる?」
春舞のその言葉に俺の心臓はドクンと跳ねた。
きっと告白の返事をしようとしている俺の顔は緊張でガチガチになっているだろう。俺は落ち着こうと数回深呼吸をしてから春舞に自分の想いを伝えはじめた。
「春舞....俺は」
「うん」
「俺は、一ヶ月間お前と過ごしてみて、本当に楽しかったし嬉しかったんだ」
「うん」
「だからその....俺もさ、お前の事好きなんだと思う。親友としてじゃなく一人の人間として」
俺がそう言うと、春舞がぱあっと顔を輝かせて俺に近づいてきた。
「ほんとっ!?それって恋愛感情の好きってことだよね?」
「う、うん。もちろん恋愛感情の好き」
「やったぁー!両思いってことだよね!!好きだよ蓮!!」
春舞はそう言うと、俺の体をぎゅっと抱きしめた。そしてそのまま俺の胸に顔を埋める。
「良かったぁ....本当に良かったよぉ....」
そんな春舞の幸せそうな声を聞いていると俺の方まで幸せな気持ちになってくる。
この一ヶ月で春舞はたくさんの幸せを俺にくれた。
春舞の綺麗な寝顔を毎朝見れる幸せ、俺の作った料理を嬉しそうな顔で食べてくれる幸せ、そして、春舞とずっと一緒にいれる幸せ。
その幸せ一つ一つが、春舞が一ヶ月間の恋人期間の提案をしてくれなかったら味わえなかったことばかりだ。
だからこれからは、春舞が俺にしてくれたように、俺が春舞にたくさんの幸せをあげよう。春舞を一番幸せにしてあげれるのは自分だと胸を張って言えるくらいに。
俺は心のなかでそう誓って、春舞の背中に手を回し抱きしめ返す。
そして、春舞の口に軽い口付けをした。
ラジオ代わりにしているテレビの天気予報によると、今日は夏日になるらしい。
「今日から夏か....嫌だなぁ....」
俺はボソッとため息混じりにそう呟く。
どうしても夏は苦手だ。年々暑くなるし日焼けするしであんまり良い印象が無い。
今年の夏はあんまり暑くならないといいな。そんなことを考えながら作り終えた二人分の朝食を食卓に並べ、チラッと壁の時計を見ると七時過ぎ。部屋で寝ている春舞を起こす時間だ。
キッチンを抜け春舞の部屋に入ると、ベットで寝ている春舞がすぐに目に入った。
色白な肌に長いまつ毛。
通った鼻筋に桜色の唇。
誰もが羨むようなパーツで構成された春舞の綺麗な寝顔がカーテンから差し込む朝日に照らされて、より一層美しさを際立たせている。
毎朝見ているはずの春舞の寝顔に未だに見惚れてしまいそうになるが、今は春舞を起こすことが先だ。
「朝だぞ春舞。起きろー」
....やっぱり起きない。
正直声かけくらいでは起きてくれないことは分かっていたから、俺は春舞の側に行き頬へ軽い口付けをした。
頬から口を離すと春舞の綺麗な目がパチっと開き、目が合う。春舞は俺の存在に気がつくと嬉しそうな顔を浮かべながら
「蓮、おはよぉ」と、とろんと眠気の残った声で俺に挨拶をした。
「おはよ。朝ご飯出来てるから顔洗って早く来いよ」
「はーい」
春舞は眠そうに返事をしながらのそのそとした動きでベットから降りて、そのまま洗面所へと歩いていった。
春舞が部屋から出て行ったのを確認して、俺は「ふぅ....」と息を吐いた。そして、高まった心拍数を落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸をする。
同性に、幼馴染に、その上誰もが羨むほどに整った春舞の顔に口付けをするのは毎回ドキドキしてしまうし、そのドキドキが顔に出てないか不安で余計ドキドキしてしまう。
だから毎回春舞が部屋から出て行った後に呼吸を整えてから食卓に向かうことにしている。
春舞を起こす時に口付けをするようになったのは一ヶ月前、放課後の教室で春舞に告白をされてからだ。
春舞とは小さい頃からずっと親友だったし、親友より上の関係になることはないと思ってたから、春舞からの告白は本当に驚いた。
正直俺も春舞のことは好きだったが、親友としての好きなのか恋愛感情の好きかは分からなかった。 だからきっと、春舞もどっちの好きか分かってないんじゃないかと伝えて断ったのだが....
「じゃあさ、一ヶ月間恋人っぽいことをしようよ。一ヶ月経って何も無かったら恋愛感情無しってことでまた振ってくれて良いからさ」
春舞がそんな提案をしてきた。
確かにそれは良い考えかもしれない。お互いの好きが恋愛感情かどうか確認出来るし、告白の返事も一ヶ月間考えられると思い俺は二つ返事で了承した。
それから一ヶ月間、俺と春舞のお試しの恋人期間が始まった。
俺の家に春舞が泊まったりデートスポットに二人で行ってみたり。朝の口付けもその一つだ。
そして、その一ヶ月間の恋人期間は今日で終わりを迎える。
「一ヶ月、か....」
春舞に告白をされた日から今日までの一ヶ月間はあっという間だった気がする。
毎日春舞を起こして、一緒に朝ご飯を食べて、一緒に学校行って、一緒に帰って、一緒に晩ご飯を食べて....
この一ヶ月間は今までの人生の中で間違いなく充実した時間だったと思う。
だからこそ、今日中に答えを出さないといけない。一ヶ月前のように放課後の教室で、春舞からの告白の返事を伝えないといけない。
「よし」
俺は気持ちを切り替えるためにパンっと軽く頬を叩くと食卓に向かい、春舞が来るのを待つことにした。
「蓮、お待たせー」
と、しばらくして顔を洗い終えた春舞が食卓に座る。
「じゃあ食べるか」
「うん!いただきまーす」
「いただきます」
二人で手を合わせそう言うと、春舞はトーストにイチゴジャムをたっぷり塗りはじめる。春舞のいつもの食べ方だ。そして一口かじると幸せそうな顔を浮かべている。
俺はそんな幸せそうな顔を浮かべる春舞を見ながらトーストにバターだけを塗る。
「蓮、今日はいつもより食べる量が少ないね?調子悪い?」
「いや、調子は別に悪くないよ」
俺はトーストを一口かじってからそう答える。
春舞に告白の返事をしなきゃって朝から考えてたから食欲が湧かない、なんて言えるはずがない。
その後は他愛もない話をしながら朝食を食べ進めた。
そして、朝食を食べ終えた俺達は学校に行く準備をして、玄関に向かう。
「ねぇ、蓮」
玄関で二人並んで靴を履いていると、春舞が手を止めて俺の方を見て言った。
「ん?」
「今日で告白してから一ヶ月だね」
「そうだな」
「放課後、告白の返事楽しみにしてるからね」
「....うん、分かってる」
俺がそう答えると、春舞は幸せそうな笑顔を浮かべた。
「ちゃんと覚えててくれて良かった。じゃあ、行こっか!」
そしてそのまま春舞は俺の手を引いて玄関から外へ出る。俺はそんな春舞に引っ張られながら高校へと向かった。
それから放課後になるまでの時間はあっという間で、気がつけば教室は俺と春舞の2人きりになっていた。静かな教室に遠くの運動部の声が響く。
「じゃあ蓮、告白の返事聞かせてくれる?」
春舞のその言葉に俺の心臓はドクンと跳ねた。
きっと告白の返事をしようとしている俺の顔は緊張でガチガチになっているだろう。俺は落ち着こうと数回深呼吸をしてから春舞に自分の想いを伝えはじめた。
「春舞....俺は」
「うん」
「俺は、一ヶ月間お前と過ごしてみて、本当に楽しかったし嬉しかったんだ」
「うん」
「だからその....俺もさ、お前の事好きなんだと思う。親友としてじゃなく一人の人間として」
俺がそう言うと、春舞がぱあっと顔を輝かせて俺に近づいてきた。
「ほんとっ!?それって恋愛感情の好きってことだよね?」
「う、うん。もちろん恋愛感情の好き」
「やったぁー!両思いってことだよね!!好きだよ蓮!!」
春舞はそう言うと、俺の体をぎゅっと抱きしめた。そしてそのまま俺の胸に顔を埋める。
「良かったぁ....本当に良かったよぉ....」
そんな春舞の幸せそうな声を聞いていると俺の方まで幸せな気持ちになってくる。
この一ヶ月で春舞はたくさんの幸せを俺にくれた。
春舞の綺麗な寝顔を毎朝見れる幸せ、俺の作った料理を嬉しそうな顔で食べてくれる幸せ、そして、春舞とずっと一緒にいれる幸せ。
その幸せ一つ一つが、春舞が一ヶ月間の恋人期間の提案をしてくれなかったら味わえなかったことばかりだ。
だからこれからは、春舞が俺にしてくれたように、俺が春舞にたくさんの幸せをあげよう。春舞を一番幸せにしてあげれるのは自分だと胸を張って言えるくらいに。
俺は心のなかでそう誓って、春舞の背中に手を回し抱きしめ返す。
そして、春舞の口に軽い口付けをした。