「……で、結局マーチって幸ちゃんのなに?」
昼食後のまったりとした時間の中で、刀真は本を読む幸人に問いかけた。二人きりで屋上前の階段で昼食をとるのが日課と化した二人は並んで階段に座る。それも二人のなかでのルーティンだった。
マーチ、という単語に、幸人は心底嫌そうな顔でゆっくりと視線を刀真に向けた。そして、ぽつりと話し始める。
「……従兄だよ。母親の妹の子」
「え」
「高校卒業してそのまま海外に飛んでった叔母さんが向こうで結婚して、離婚して。で、連れて帰って来たのがマーチ」
「あーだから名前がマーチ……じゃあ三月生まれとか?」
「や、それは関係ない。叔母さんがそういう気分だったからって聞いた」
「……行進のほうかぁ……」
にやにやと微笑む彼の姿が思い浮かぶ。
「……そっか、良かった。幸ちゃんの元カレかもって思ってたから」
「そんなわけない」
「ほら妙に親しかったからさ、どうなのかなぁーって気になってたんだ」
「最初に誰とも付き合ったことはないって言っただろう」
「…………そうだったっけ」
刀真は首を傾げる。自分が幸人に告白した歴史的瞬間だったのに、思い出せない。
「……緊張してたから、思い出せないな。まあ、でも本当に良かった」
「そもそも早崎は考えすぎ。それに勝手に思い込んで悩み過ぎる」
「えー、こればっかりは性格的な問題だから。てか、幸ちゃんも何でも自分で抱え込みすぎ」
「……じゃあ、一緒に長生きしたいから考えすぎるのはやめにしよう」
「え」
幸人の言葉に刀真は呆然とする。言葉も返せずにいると「ふふっ」と、小さな笑い声が聞こえてきた。最近の幸人は穏やかな笑みをよく浮かべるようになった。クラスメイトも少しずつ幸人の魅力に気づきつつあるが、刀真は当然しっかりと牽制している。
「ゆ、幸ちゃん、それってずっと一緒にいたいってこと……!?」
「まぁ、つまりはマーチみたいに面白おかしく生きたら長生きできるってこと」
「それはすごく難易度が高そう……。それはそうとして、幸ちゃんさっきのもう一回言って。今度は録音するから」
「……さあ、もうなんて言ったか忘れた」
刀真のもう一回言ってコールを聞きながら、微笑みを浮かべた幸人は本に視線を移す。刀真との時間は幸人にとって暇なき楽園だった。
昼食後のまったりとした時間の中で、刀真は本を読む幸人に問いかけた。二人きりで屋上前の階段で昼食をとるのが日課と化した二人は並んで階段に座る。それも二人のなかでのルーティンだった。
マーチ、という単語に、幸人は心底嫌そうな顔でゆっくりと視線を刀真に向けた。そして、ぽつりと話し始める。
「……従兄だよ。母親の妹の子」
「え」
「高校卒業してそのまま海外に飛んでった叔母さんが向こうで結婚して、離婚して。で、連れて帰って来たのがマーチ」
「あーだから名前がマーチ……じゃあ三月生まれとか?」
「や、それは関係ない。叔母さんがそういう気分だったからって聞いた」
「……行進のほうかぁ……」
にやにやと微笑む彼の姿が思い浮かぶ。
「……そっか、良かった。幸ちゃんの元カレかもって思ってたから」
「そんなわけない」
「ほら妙に親しかったからさ、どうなのかなぁーって気になってたんだ」
「最初に誰とも付き合ったことはないって言っただろう」
「…………そうだったっけ」
刀真は首を傾げる。自分が幸人に告白した歴史的瞬間だったのに、思い出せない。
「……緊張してたから、思い出せないな。まあ、でも本当に良かった」
「そもそも早崎は考えすぎ。それに勝手に思い込んで悩み過ぎる」
「えー、こればっかりは性格的な問題だから。てか、幸ちゃんも何でも自分で抱え込みすぎ」
「……じゃあ、一緒に長生きしたいから考えすぎるのはやめにしよう」
「え」
幸人の言葉に刀真は呆然とする。言葉も返せずにいると「ふふっ」と、小さな笑い声が聞こえてきた。最近の幸人は穏やかな笑みをよく浮かべるようになった。クラスメイトも少しずつ幸人の魅力に気づきつつあるが、刀真は当然しっかりと牽制している。
「ゆ、幸ちゃん、それってずっと一緒にいたいってこと……!?」
「まぁ、つまりはマーチみたいに面白おかしく生きたら長生きできるってこと」
「それはすごく難易度が高そう……。それはそうとして、幸ちゃんさっきのもう一回言って。今度は録音するから」
「……さあ、もうなんて言ったか忘れた」
刀真のもう一回言ってコールを聞きながら、微笑みを浮かべた幸人は本に視線を移す。刀真との時間は幸人にとって暇なき楽園だった。