「二人、仲良いね」

汗だくの駿が言う。
今更すぎる謎の発言に笑うしかない。

「ふはは、どの口が言ってんだ。お前もだろ」

「俺も涼ちゃんって呼ぼうかな」

腰に手を当てて格好つけたポーズの駿の冗談に俺も答える。

「じゃあ駿ちゃんって呼びますけど」

「やめてくれ、母親思い出して鳥肌が」

駿の母親はよく俺たち3人の面倒を見てくれた。
正直、自分の母親より仲が良いと言っても過言ではない。

「言いつけるぞ」

「それはもっとやめてくれ」

「駿、戻らないと監督怒るよ」

倉庫から出てきた晴が駿に呼びかける。

「やば、じゃあね」

駿は俺たちに軽く手を振り、晴は呆れたように笑って手でしっしと追い払った。

軽い冗談で笑い合える、この関係性がどうしようもなく好きだった。
一生このままでいられるなんて、そんな高望みをしていたわけではない。
ただこういう時間がもうすぐなくなるかもしれないと想像するようになってしまったら、
こんな今も特別に思えて切なくなった。