テストが無事に終わった日の午後、部室へでも行こうかとしていたら晴に引き止められた。
野球部が利用している倉庫の片付けをしなければいけないが、
部員は試合前で練習が厳しく、男手が足りないらしい。
特に予定もない俺は手伝いを引き受けた。

晴の指示のもと、乱雑に置かれた野球道具を外に出しては整頓して中に戻す。

「涼ー、何してんの」

グラウンドの方から声が聞こえた。
駿だ。
少しばかり久々にユニフォームを身に纏った駿がこちらに向かって走ってくる。

「体育倉庫の片付け。なんかこき使われてる」

「こきってー。涼ちゃんが手伝うって言ったんだよ」

体育倉庫から古い野球ボールが詰め込まれた箱を運びながら、晴が口を尖らせる。
半強制じゃなかったっけ?と若干疑問に思いながらも俺は晴に従う。

俺も駿も、長い付き合いの中なんだかんだ晴を甘やかし、それと同時に甘えてきた。
幼い頃の晴は比較的体が小さく、遊びに行く俺たちの後ろを一生懸命駆けてついてきた。
妹のように思ってきた存在で、駿が晴を恋愛対象として見られないのもきっと俺だから納得がいくし理解できる。

「ごめんごめん、晴ちゃんそれ重いでしょ、運んどくから別のやりなよ」

「ありがとう」

晴はそう言うとまた倉庫に戻って行った。
入れ替わるように駿が俺のそばにくる。

成長につれて、晴は後ろをついてくるような存在ではなくなった。
隣で3人肩を並べていた。
俺と駿が喧嘩をすると仲裁役はいつも晴で、
そんな時、晴はもう俺たちを追い越していてその背中が見えた。
きっと駿もそう感じているから、2人が恋人同士になるのは時間の問題なのではないかとも思う。