「付き合う?晴ちゃんと」

俺の質問に駿はよそを向いたまま返事をする。

「晴のこと好きだけど、この好きがどういう好きかわからない」

良い印象を抱いていることはわかりきっていた。
3人で、長く幼なじみをやってきたから。

「晴ちゃん可愛いじゃん」

「可愛かったら付き合うの?」

「さあ。俺付き合ったりしたことないから知らない」

駿が急にこちらをぐるんと振り返る。
短い髪がノートの紙に擦れてサササと音が鳴る。
上目遣いの瞳と目が合った。

「付き合っていい?」

「なんで俺に聞くの」

「涼が嫌かと思って。俺だったらやだもん。お前に彼女できたら」

付き合いたいなら付き合えよって、駿を後押ししたい気持ち、
2人がいざ付き合うことになったら俺はどう思うのかなって、考えたくない気持ち、
どちらも本当だった。

「想像したら涙出てきたわ」

そう言う駿の目には本当に涙が浮かんでいる。

「親かお前は」

ツッコミを入れながらその頭をポンと叩く。
茶化しながらも、その素直さに心臓が痛くなった。
俺が無視している感情が確実に俺の中にある。
でもどんなふうに取り出して良いのか検討もつかない。