テスト前、本当にギリギリになってから駿は俺の部屋にやってくる。
そのギリギリ加減は中学から今に至るまで徐々に増している。
今回は3日前になってようやく現れた。

「なあ、興味なかったら無視していただいていいんだけどさ」

「無視するわ」

テスト直前の自覚がないのか、こいつは。
いつにも増してやる気が出ない様子の駿をあしらい机に向かう。

小さなローテーブルに2人分の問題集とノートを広げている。
筆箱なんかは床でいい。

「晴ってさ、俺のこと好きなんかな」

「え」

これはさすがに手を止めた。
足が思わず動いて側にあった筆箱を倒してしまった。
飛び出たペン類を片付けながら、駿の話を聞く。

「なんか、そんな気がしてきた」

「なんで。なんかあった?」

晴の気持ちを知りながら、こんなことを駿に聞くのは間違っているだろうか。

「うーん。あったような、なかったような
この前涼がいなかった日告られたような…」

鈍感な駿でも、告白の雰囲気みたいなものは感じ取っていたらしい。
俺は何も勘付かれないようにしらを切る。
俺から晴の気持ちを伝えるわけにはいかない。

視線は問題集に落としたまま、そっけなく答えた。

「そう」

「気にならない?」

「気にしてほしい?」

「俺だったら気にするけど」

「じゃあ俺も気になる」

「なんだそれ。もういい」

机に突っ伏した頭をそっぽ向けて、俺の目には駿の坊主頭しか映らない。