◇
駅までの道を駿とふたりで歩く。会話はなかった。
今日のことはなかなか忘れられないと思う。
何を話したかより、覚えていたいことがある。
隣を歩く駿の横顔。
いつもより狭い歩幅。
うっすら汚れた、見慣れたスニーカー。
白い息。
微かにする春の匂い。
駅に近づくにつれ現れる錆びたフェンス。
最近新しくなった信号機。
青に変わり、また俺たちは歩き出す。
「涼見て」
電車が来るまであと数分のホームで、駿はポケットから折り畳まれた紙を取り出した。
カラーで印刷された光沢紙に見覚えがあった。
「これ俺のお守り」
野球部の県予選決勝を伝える、俺の新聞だった。
一面に駿の笑顔が輝く。
もうこの先の全てがどうでも良いと思える。
今、認めてもらえたから。
俺が一番大事に頑張ったものを、誰よりも大事な人が。
この先のことに確信はない。それでも良い。
駅までの道を駿とふたりで歩く。会話はなかった。
今日のことはなかなか忘れられないと思う。
何を話したかより、覚えていたいことがある。
隣を歩く駿の横顔。
いつもより狭い歩幅。
うっすら汚れた、見慣れたスニーカー。
白い息。
微かにする春の匂い。
駅に近づくにつれ現れる錆びたフェンス。
最近新しくなった信号機。
青に変わり、また俺たちは歩き出す。
「涼見て」
電車が来るまであと数分のホームで、駿はポケットから折り畳まれた紙を取り出した。
カラーで印刷された光沢紙に見覚えがあった。
「これ俺のお守り」
野球部の県予選決勝を伝える、俺の新聞だった。
一面に駿の笑顔が輝く。
もうこの先の全てがどうでも良いと思える。
今、認めてもらえたから。
俺が一番大事に頑張ったものを、誰よりも大事な人が。
この先のことに確信はない。それでも良い。