卒業から数日経って、東京へと引っ越す日がやってきた。

朝、キャリーケースを手に玄関へ向かう俺を母親が引きとめた。

「これ、お父さんとお母さんから。好きに使って」

その手には細長い封筒があった。
少なくはない金額が入っているのはすぐわかった。

「いいよ。引越しの手配まで手伝ってもらったのに」

断る俺の手に封筒を無理矢理握らせる。

「いいの。
涼が生まれてきて、18年間、幸せだったから」

これから何があったっていいよ。

母さんの目にキラキラ光って俺が映っている。
無償の愛に包まれていると気づいた。