塾が休みだったその日の放課後、帰り道でも駿は田中の言ったことを気にしていた。

「気を許してるってことだからね?ね!?」

「あはは、わかってるってば。そのままでいいよ」

わかりきっていて、そんなこと俺は気にしない。
気にしないよ、全部受け入れるよ。
そう言えることが幸せだと思う。

「駿、これ」

カバンから手のひらに乗るくらいの袋を取り出した。
少し崩れたラッピングを直して駿に渡す。

「誕生日おめでとう」

中身は言わなかったけれど、スノードームが入っている。
家に帰って一人になったこいつが箱を開けて、
チラチラ落ちるドームの中の雪を見て、
一瞬でも笑顔になればいい。
それだけを込めて贈った。

目に見える形あるものは、手のひらから手のひらへとお返しすることができる。