椅子に座っている俺のそばに駿はしゃがみ込んで手を取る。
俺の不安な気持ちを一瞬で察したみたいに。
こんな言葉足らずを、小さな隙間を拾い集めて一粒一粒汲み取るように。

「涼の隣は俺の居場所だ。小さい頃からずっと。
俺が何をやっても涼は笑ってくれて、
涼を笑わせることが俺の楽しみだったし、
辛い時は黙ってそばにいてくれて、俺が話し出すのを待ってくれた。
受け入れてくれた。
お前を好きだと気づいてからはどうやって返そうかいつも考えた」

「俺の方がもらってばかりだと」

ぐっと鼻の奥が痛くなって涙腺が緩むのがわかった。

また俺は俺の感情を閉じ込めて隠していた。
今度は自覚もないままに、気づかないうちにだ。

「そんなわけないよ。俺が離れないから、涼はただ受け入れて。大丈夫だから」

将来のことを考えると苦しくてたまらなくなる。
俺が地元に戻るかも、駿が東京に来るかもわからない。
いつかは親にもこの関係を言わなきゃいけない。
今が終わらないでほしい。