次月号のレイアウトを考えながらノートパソコンで作業をしていると、
過去の新聞を読みながらいつのまにか机に突っ伏して寝ていた駿が目を覚ました。

「寝てた」

寝起きのガサついた声で駿がつぶやく。

「はは」

画面から目を離して駿を見る。

「何だよ」

「赤くなってる」

「マジで」

駿が自分の左頬を撫でる。

「違う、ここ」

俺は無意識に駿の左のこめかみに触れていた。
伸びかけの坊主頭から少し視線を落とす。

目が合う。眠そうに潤んだ瞳から目を逸せない。

ああ、好きなんだと。
この時初めてわかった。

この目に吸い込まれたっていいから、誰のものにもならないで。
他の誰もそのドアを開けないで。
ふたりでいたい。
駿がいい。

やっと好きだと気づけた。
好きだとやっと“思えた”。

「好きだよ、俺も」

俺がそう言うと、駿は声をあげて笑いながら身を乗り出し、覆い被さるように俺の体を強く抱きしめた。
俺の細っこさと駿の分厚さはあまりフィットしなくて、その不器用な硬さが可笑しくて俺も笑った。

後から誰がなんと言おうと、この時お互いの気持ちは同じだったはずだ。