「晴ちゃんは?」

3人分のジュースとポテトを手に席に戻ると、そこには駿の姿しかない。

「帰った」

「え、なんで」

各々の席にジュースを置こうとした手が止まる。

「俺のこと好きなのかって聞いたら好きって言われて、
ごめんって言ったら泣かれた」

「バカじゃないの、いやバカだろお前」

思いがけない駿の言葉に、俺も言葉がついて出る。

「だって付き合うとか…」

「それはそれでいいけど、こんな、来たばっかで言わなくても」

泣きながらか怒りながらか帰って行く晴の姿が浮かんで、
眉間に皺が寄るのが自分でもわかった。

「そういうもん?」

ただ、真剣な顔で聞いてくる駿を見るとその緊張が緩む。余裕がなくなる。
というより、自分は何をわかったような口をと一気に自信がなくなる。

「さあ、たぶん」

「あーミスった。どうしよう」

俺の返答を聞いて駿は項垂れた。

駿が俺の言葉で一喜一憂することはよくある。
その度、そんな大層なことは言っていないだろと思う。
俺はお前に影響を与えられるようなそんな人間ではないと思う。

「とりあえずこれ食べてよ。
山盛り選んじゃったんだから」

なんでもないように、気を取り直すように駿にポテトを差し出す。

「はあ…」

「泣くなよ」

「泣いてねえよ」

そう言って頭をあげた駿の顔にいつものノリが宿っていて、俺はやっと笑えた。