まだ町は見えませんね。幸い。私の選んだ『吸血族』は身体能力に優れた種族ですから、疲れらしい疲れは感じていません。主に膂力に優れ、再生能力など多彩な特殊能力を持つというのは、日本でのイメージ通りでしょうか。
 とはいえ、地球でいう化け物の吸血鬼とはまったくの別物です。
 血は儀式で飲むくらい。趣向品になることもありますが、普通、人のものは含まれません。
 あ、たとえ儀式でも同性からの吸血を避けるところは一部の地球産と同じですね。なんでも性的快感を感じてしまうとか。

 あとは、そうですね。不老不死ではありませんが、若い期間が長い半不老長寿です。普通の『吸血族』がだいたい三百から五百年。真祖は最低でも千年です。見た目の年齢は、個人差はあるものの多くは二十前後で止まるそうです。
 これがこの種族を選んだ理由の一つですね。

 ちなみに、アンデッドとしての“吸血鬼”が別にいるので、そう呼ぶと滅茶苦茶怒るらしいです。


 まだ森しか見えませんね。種類まではわかりませんが、常識外に巨大な木なんてものもありません。
 世界樹でも見えたらここが『東大陸』と確定するのですが……。
 そう、世界樹ですよ世界樹! 行きたいですよね! いえ、絶対いきましょう!
 エルフが守っているらしいので、ぜひエルフの人と仲良くならねば!
 四大国を主にした国々からなる『東大陸』は、ほかにも様々な種族が暮らしているらしいので、回るのが楽しみですね。

 逆に『西大陸』にはできるだけ近づきたくありません。そちらは純粋な『人族』以外を迫害する人の多い地域らしいですからね。『吸血族』の私がそんなところへ行ったら、どうなることやら……。最悪奴隷にされます。

 とまあ、色々管理者から聞きましたが、やはり自分の目で見なければいけませんよね!
 楽しみです。

 ――おや?あれは城壁でしょうか?……ですね。奇跡さん流石です。
 それでは行きましょう。