皆さんこんにちは。アルジュエロです。
さて、私は今、どこにいるでしょーか!!
正解は……こっこで〜す! こっこ、こっこ!
リムリアにあるとっっても大きなお屋敷の中でした〜!
……はい。現実逃避はやめましょう。
今私の目の前にいるダンディーなナイスミドル、リムリアを収める領主様に、何故私たちが呼ばれたのか、その話をするには数時間前まで遡ることになります。
◆◇◆
古本屋を出た私たちは、そのまま路地裏の奥へと進みます。最悪迷っても飛べばいいですし。
奥の方には街壁が見えます。太陽の位置からして北西方向。スラムのある方角ですね。あんな所に用はないので、途中の角を曲がって城壁に対して水平方向に歩きます。
閑静な小道には干してある洗濯物がちらほらと見られ、人々の暮らしが垣間見えますね。なにやら賑やかな声も聞こえてきましたし、そろそろ大通りに出られそうです。
……(やめてっ!)
「!? 今の、聞こえた!?」
「うん、行く……!」
風に乗って聞こえた悲鳴は、人外の聴力にも小さいです。私たちは道の狭い迷路を〈気配察知〉を頼りに走ります。
「いたっ! ブラン、このまま! 私は上から回り込む!」
「うんっ!」
最近つばさ無しでも僅かな浮力の得られると知った〈飛行〉スキルを発動させ、大きく跳躍し、下手人である三人の男たちの前方に着地します。
「なっなんだぁ!?」
「女? ついでだ。コイツも連れてくぞ」
「その子を離しなさい。今なら見逃してあげるから」
「は? 何言ってんだこの女。しかし、いい体してんな。兄者、コイツは俺らで楽しむんだよな?」
「もちろん」
鬱陶しい。抱えられている少女の身なりは良く、言っている事から目的は金か、親に恨みでもあるかといったことが予想できます。つまりあの小汚い男たちは雇われただけのトカゲの尻尾の可能性が高いという事。
ならば。
「ちょっと寝てなさい」
〈威圧〉しただけで兄者と呼ばれた男以外気絶してしまいます。その兄者も動けなくなっているところを、後ろから追いついたブランに音もなく意識を刈り取られました。少女は地面に落ちる前にキャッチ。……この子、なかなか図太いですね。小物とはいえ大の男が粗相をして気絶するほどの〈威圧〉を受けながらも、心地好さそうな寝息を立てています。
「とりあえず、宿に連れて帰りましょうか」
「うん。……こいつらは?」
「衛兵に渡しましょう。先にその子を連れ帰って置いてくれる?」
「うん。わかった」
ブランが去るのを見届けて男たちの処理に移ります。
一先ず〈ストレージ〉から出したロープで縛り、〈吸血〉しておきます。暴れられると面倒なので、体力は奪っておこうかと。実際に牙を立てなくていいのは救いですね。こんなの口に含みたくありません。
処理を終え、ひとつなぎのロープで縛った両端を持ちます。人に見られては騒ぎになるので、〈隠密〉を発動させて飛んでいきましょう。
◆◇◆
「こんにちは」
「これは『狂戦姫』殿。お久しぶりです。今日は……あぁ、その者たちが何かしましたか?」
詰所で迎えてくれたのは、いつかの衛兵さんでした。よく会いますね。
「その呼び方はやめてちょうだい。アルジェでいいわ」
「失礼しました。アルジェ殿」
「それで、コイツらを引き取って欲しいのだけれど。女の子を誘拐しようとしてたみたいだから。女の子はまだ目を覚ましてないからブランに宿へ運んでもらったわ」
「わかりました。処理しておきますね。その子を後で連れてきていただけますか?」
「わかったわ。それじゃよろしくね」
よし、これでいいでしょう。急いで宿へ帰りましょうか。
◆◇◆
「帰ったわよ」
「姉様、お帰り。まだこの子寝てる」
「――っん、ん〜………ハッ! ここは?」
「グッドタイミングだったみたい。おはよう。気絶する前の事は覚えているかしら?」
「貴女は……。…………そうですか、どうやら私は助けて頂いたようですね」
なんか、面倒ごとの予感がします。見た目はこの世界の十二歳くらい(日本人なら中学三年生くらい?)なのにこの感じ……。
「失礼しました。私はリリアン・フォン=リムリア。リムリア領主であるレオン・デューカリー・フォン=リムリアの娘です」
はーい、トラブルさんごあんなーい!
よりによってリムリア公爵の娘とは……。
それにしても、国名はフランス語、階級は英語、姓の前につけるノビリアリー・パーティクル(日本語だと何でしょう?)はドイツ語が混じってるんですが、なんなんでしょうね……。ちなみに王様はユリウス、王太子様はジュリアスという名前です。ブルートゥス、お前もか!(※誰も裏切っていません)
なんて現実逃避している場合ではありませんね。
「ご無礼をお許しください。このような安宿の一室で申し訳ありません。私はアルジュエロ=グラシアと申します。Bランクの冒険者です」
「わ、わたひは、ブラン=グラシアでぃえしゅ」
ブラン、落ち着いてください……。まあ可愛いのでいいですが!!
一応カーテシーをしますが、できてますかね?
「ふふっ。そんなに畏まらなくてもいいですよ。私はただ公爵の娘というだけで、偉業を成したわけでもありません」
おぉ! 最初の貴族はまともな人でした!
物語で見るようなワガママヒメサマではないようで好感が持てます。
「そういう訳にはいきません。私どもは平民でございます」
「もぅ……」
困ったように笑っておられますが、一応わかってはおられるのでしょうね。平成日本と異なり、身分差は大きいのです。
「ブラン、衛兵さん呼んでくるからもう少しお願い」
「うん、わかった」
公爵令嬢を無用心に連れ歩く訳にはいきませんから。
◆◇◆
「もうすぐ馬車が到着します。リリアン様はそちらへお乗りください。アルジェ殿は後日領主館の方から召喚状が届くと思いますので、しばらく遠出は控えていただければ助かります」
「ええ、わかったわ」
「別に私と一緒に行けばいいでしょう? 正装も問題無いようですし」
えぇ……イキナリですか? この姫様、始めの印象と異なってお転婆説が浮上しましたよ……。
「えぇと、アルジェ殿は大丈夫ですか?」
「わかりました。同行させて頂きます」
「(はわわわわ)」
ブラン、落ち着きなさい。目を回しててももう行くしか無いわ……はぁ。
………
……
…
◆◇◆
ここで冒頭に戻ります。さっさと済ませたいですね……。
さて、私は今、どこにいるでしょーか!!
正解は……こっこで〜す! こっこ、こっこ!
リムリアにあるとっっても大きなお屋敷の中でした〜!
……はい。現実逃避はやめましょう。
今私の目の前にいるダンディーなナイスミドル、リムリアを収める領主様に、何故私たちが呼ばれたのか、その話をするには数時間前まで遡ることになります。
◆◇◆
古本屋を出た私たちは、そのまま路地裏の奥へと進みます。最悪迷っても飛べばいいですし。
奥の方には街壁が見えます。太陽の位置からして北西方向。スラムのある方角ですね。あんな所に用はないので、途中の角を曲がって城壁に対して水平方向に歩きます。
閑静な小道には干してある洗濯物がちらほらと見られ、人々の暮らしが垣間見えますね。なにやら賑やかな声も聞こえてきましたし、そろそろ大通りに出られそうです。
……(やめてっ!)
「!? 今の、聞こえた!?」
「うん、行く……!」
風に乗って聞こえた悲鳴は、人外の聴力にも小さいです。私たちは道の狭い迷路を〈気配察知〉を頼りに走ります。
「いたっ! ブラン、このまま! 私は上から回り込む!」
「うんっ!」
最近つばさ無しでも僅かな浮力の得られると知った〈飛行〉スキルを発動させ、大きく跳躍し、下手人である三人の男たちの前方に着地します。
「なっなんだぁ!?」
「女? ついでだ。コイツも連れてくぞ」
「その子を離しなさい。今なら見逃してあげるから」
「は? 何言ってんだこの女。しかし、いい体してんな。兄者、コイツは俺らで楽しむんだよな?」
「もちろん」
鬱陶しい。抱えられている少女の身なりは良く、言っている事から目的は金か、親に恨みでもあるかといったことが予想できます。つまりあの小汚い男たちは雇われただけのトカゲの尻尾の可能性が高いという事。
ならば。
「ちょっと寝てなさい」
〈威圧〉しただけで兄者と呼ばれた男以外気絶してしまいます。その兄者も動けなくなっているところを、後ろから追いついたブランに音もなく意識を刈り取られました。少女は地面に落ちる前にキャッチ。……この子、なかなか図太いですね。小物とはいえ大の男が粗相をして気絶するほどの〈威圧〉を受けながらも、心地好さそうな寝息を立てています。
「とりあえず、宿に連れて帰りましょうか」
「うん。……こいつらは?」
「衛兵に渡しましょう。先にその子を連れ帰って置いてくれる?」
「うん。わかった」
ブランが去るのを見届けて男たちの処理に移ります。
一先ず〈ストレージ〉から出したロープで縛り、〈吸血〉しておきます。暴れられると面倒なので、体力は奪っておこうかと。実際に牙を立てなくていいのは救いですね。こんなの口に含みたくありません。
処理を終え、ひとつなぎのロープで縛った両端を持ちます。人に見られては騒ぎになるので、〈隠密〉を発動させて飛んでいきましょう。
◆◇◆
「こんにちは」
「これは『狂戦姫』殿。お久しぶりです。今日は……あぁ、その者たちが何かしましたか?」
詰所で迎えてくれたのは、いつかの衛兵さんでした。よく会いますね。
「その呼び方はやめてちょうだい。アルジェでいいわ」
「失礼しました。アルジェ殿」
「それで、コイツらを引き取って欲しいのだけれど。女の子を誘拐しようとしてたみたいだから。女の子はまだ目を覚ましてないからブランに宿へ運んでもらったわ」
「わかりました。処理しておきますね。その子を後で連れてきていただけますか?」
「わかったわ。それじゃよろしくね」
よし、これでいいでしょう。急いで宿へ帰りましょうか。
◆◇◆
「帰ったわよ」
「姉様、お帰り。まだこの子寝てる」
「――っん、ん〜………ハッ! ここは?」
「グッドタイミングだったみたい。おはよう。気絶する前の事は覚えているかしら?」
「貴女は……。…………そうですか、どうやら私は助けて頂いたようですね」
なんか、面倒ごとの予感がします。見た目はこの世界の十二歳くらい(日本人なら中学三年生くらい?)なのにこの感じ……。
「失礼しました。私はリリアン・フォン=リムリア。リムリア領主であるレオン・デューカリー・フォン=リムリアの娘です」
はーい、トラブルさんごあんなーい!
よりによってリムリア公爵の娘とは……。
それにしても、国名はフランス語、階級は英語、姓の前につけるノビリアリー・パーティクル(日本語だと何でしょう?)はドイツ語が混じってるんですが、なんなんでしょうね……。ちなみに王様はユリウス、王太子様はジュリアスという名前です。ブルートゥス、お前もか!(※誰も裏切っていません)
なんて現実逃避している場合ではありませんね。
「ご無礼をお許しください。このような安宿の一室で申し訳ありません。私はアルジュエロ=グラシアと申します。Bランクの冒険者です」
「わ、わたひは、ブラン=グラシアでぃえしゅ」
ブラン、落ち着いてください……。まあ可愛いのでいいですが!!
一応カーテシーをしますが、できてますかね?
「ふふっ。そんなに畏まらなくてもいいですよ。私はただ公爵の娘というだけで、偉業を成したわけでもありません」
おぉ! 最初の貴族はまともな人でした!
物語で見るようなワガママヒメサマではないようで好感が持てます。
「そういう訳にはいきません。私どもは平民でございます」
「もぅ……」
困ったように笑っておられますが、一応わかってはおられるのでしょうね。平成日本と異なり、身分差は大きいのです。
「ブラン、衛兵さん呼んでくるからもう少しお願い」
「うん、わかった」
公爵令嬢を無用心に連れ歩く訳にはいきませんから。
◆◇◆
「もうすぐ馬車が到着します。リリアン様はそちらへお乗りください。アルジェ殿は後日領主館の方から召喚状が届くと思いますので、しばらく遠出は控えていただければ助かります」
「ええ、わかったわ」
「別に私と一緒に行けばいいでしょう? 正装も問題無いようですし」
えぇ……イキナリですか? この姫様、始めの印象と異なってお転婆説が浮上しましたよ……。
「えぇと、アルジェ殿は大丈夫ですか?」
「わかりました。同行させて頂きます」
「(はわわわわ)」
ブラン、落ち着きなさい。目を回しててももう行くしか無いわ……はぁ。
………
……
…
◆◇◆
ここで冒頭に戻ります。さっさと済ませたいですね……。