「えぇ」
「ブツはハイオークで間違いねぇな?」
「そうね。なんでわかったの?」
「そりゃ〜あの中でくすねるならオーク族だからな。んで、何も知らないお嬢ちゃんならジェネラルには手をださねぇだろうし。量より質って感じだしなぁ?」
「その通りよ。流石Aランクまで生き残ってるだけはあるわね」
「ギャハハハ! 褒めたって何もでねぇぞぉ? とにかくだぁ、ハイオークならギルドに頼んじまえばいい」

 それはいいのかしら?

「それはいいのかって顔してんなぁ? さっき言っただろぉ? 暗黙の了解って。スタンピートの基本報酬は金貨5枚しかねぇし、貢献度で稼ごうと思っても普通のやつぁ大して貰えねぇからなぁ? 嬢ちゃんは最初の魔法で数稼いだみてぇだし、そこそこもらえると思うがなぁ!」
「アレも私ってバレてたのね…」
「そりゃぁこの街で高ランクの冒険者やってるようなやつぁだいたい魔力を感じられるからなぁ! 二つ名も『爆殺姫(ボマー・プリンセス)』ってぇのが候補に挙がってたらしいぜ? まぁその後が印象的すぎてさっきいったやつになったらしいがなぁ! ギャハハハ!」

 まだそっちの方が良かった気がします…。

 しかし、基本報酬金貨5枚は少ないですか。たしかに、あれだけの数の魔物と、他にも多くの冒険者が居るとしても、戦わなければいけないという危険を考えれば少ないですね。
 緊急依頼なので参加はしなければなりませんが、モチベーションは上がりづらいでしょう。
 薄情な話ではありますが、冒険者ならとっとと別の街や国に逃げることも簡単ですから。

 この報酬は討伐した魔物の素材の売り上げから出されますが、他にもお金がかかっている部分があるために自身で同じ数狩ってきた時の収入に大きく劣ります。
 その分を冒険者がコッソリ魔物を回収して売ることで補填しようとすると、報酬やその他の消費を賄うための売り上げが減ることになります。
 しかし低いやる気で怪我をしないよう冒険者が立ち回った結果街に被害がでてしまう、なんてことになった時は余計に費用が嵩みますので、それよりはマシ程度のマイナスです。

 〈ストレージ〉もちが何十人もいたらそうもいっていられませんが、それほど珍しくはないといってもそこはスキルの進化。
 せいぜい二十人もいれば多い方らしいです。
 〈収納魔法〉の容量なんてたかが知れており、高レベルでオーク族一頭がやっと。
 それなら上手くやれば損失を出さずに済む程度だからとやかく言わないでおこうとなったわけですね。

 ともかく、それを聞いて安心した私は世紀末銀行マンにお礼を言って買取カウンターの方へむかいます。

「ハイオークの解体と素材の買取をおねがいしたいのだけど、いいかしら?」
「あ、『狂戦姫』さんですね。大丈夫です。こちらに出していただければ解体場まで運びます。」

 買取カウンターのお兄さんにまで私の二つ名は広まっているようです……。
 まあそれはもうしょうがないとして、ちょっと考えてることがあるんですよね。

「私も解体場? の方までいっちゃダメかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。こちらです」

 そう言ってお兄さんは先導してくれました。