そうだ、この時にリオラさんにしっかり聞いておきましたよ。〈魔導スキル〉の事。
 なんでも〈魔導スキル〉というのは、〈魔法スキル〉の上位互換になるそうです。
 〈魔法スキル〉は体系化された一定数の魔法を呪文をキーにして発動する、いわば初心者用オート機能のようなものですね。

 対して〈魔導スキル〉は、まず前提として『魔力操作』を必要とします。『魔力操作』で魔力を操り、性質を変化させ、現象を起こします。つまり、〈魔法スキル〉が自動でやってくれている部分を自分でやるマニュアル操作です。

 〈魔法スキル〉はスキルさえ発現し、十分なレベルであれば誰でも簡単に魔法が使える分、細かい調整がききません。せいぜい魔力量を変えて威力をコントロールできるくらいだそうです。
 そのあたりの自由さと、それに付随する難易度の高さが〈魔導スキル〉を上位とする所以ですね。

 本来であれば〈魔法スキル〉で魔力の操作を覚え、〈魔導スキル〉に至るようです。
 私の場合は転生者ゆえの無知と、しばらく魂のみで過ごしていた事が影響して飛び級できたようです。形のないエネルギー体を操るという意味では同じですからね。
 あとは日本のサブカル知識もでしょうか?

 まあいいでしょう。いい時間になったのでギルドへいってきますね。なにやら呼ばれているそうなので。


◆◇◆

「こんにちは、リオラさん」

 ギルドに着いたら真っ直ぐリオラさんの所に向かいます。今は昼前なので人は少ないです。

「こんにちは。アルジェさん。今日はしっかりオフにされているようですね。」
「アハハハハ。……悪かったわ」

 ……なぜ私が気まず気にしているかというとですね、【魔性の女】がやらかしたからです。

 どうもこの称号というのはオンオフ機能のあるものもあるようでして、その、戦いが終わって戻ってきた時にですね、魅了効果をばら撒いてしまったんです。
 相手が別のものに集中しているとほとんど掛からない程度のものなんですが、気を抜いた冒険者のみなさんには効果抜群でした……。
 今朝感じた多くの視線もこれが原因でしょう。
 今までは魂の定着率が低かったためにオフの状態になっていたようです。
 それが前日に条件を満たしたため、効果をはっきするようになってしまった、ということですね。

 つまりは【12/10^16のキセキ】も効果を発揮していなかったということになります。
 どうやら魔物に合わなかったのはスタンピートの影響だったらしいですね。いや、本当に良かった。


 などと考えている間にも会話は続きます。
 とりあえず、話をそらしましょう。

「それで、今日はなんで呼ばれたの?」
「ふふ、そんなに怒っていませんよ。それほど騒ぎが大きくなる前だったので。」
「うっ……」
「それで、お呼びした要件でしたね。今日はある方からがあなたに用があるそうです。案内しますね」

 そのある方がだれか考えつつ、リオラさんが開けてくれたカウンターを通ってギルドの三階へ向かいます。