◆◇◆
 次の日、今日も彼女はカウンターに立っていた。
 今日も依頼を受けに来る冒険者は多い。

「おはようございます。リオラさん。講習受けに来ました」

「っ!? あ、おはようございます、アルジュエロさん。ギルドカードをお願いします。……はい、大丈夫です。このまま訓練所までお願いします。凄くぴっちりした人がいるので、彼のところで集まってください」

 何か変化はあるかと、つい<鑑定>を発動してしまったリオラは驚いた。【転生者】の噂は時々耳にするが、ここまでとは思っていなかった。

(!?)

 さらに、何となく、本当になんの気もなしに<鑑定>してみたドレスがとんでもなかった。
 リオラは見た事を後悔した。しかし、見てよかったとも思う。これは言っておかなければならない。昨日落ち着いてから気づいたことも含めて。

「あの、称号、<隠蔽>された方がいいですよ。あとお洋服も。お名前はされているようですが」
(さすがにそのままはやばい。特に神聖王国の連中に見られたらどうなるか……)

 リオラは一応、名前は<隠蔽>されていたと勘違いしたフリをしておく。
 <鑑定>のレベルが高いことは隠しておく方が良いからだ。少しでも疑われる可能性は排除すべきである。

 アルジュエロはハッとした顔をした後、リオラにお礼を言いつつ慌てて去っていった。
 リオラはほっとする暇もなく次の冒険者の相手をするのだった。





◆◇◆
 ギルド内を見渡しても冒険者はほとんどいない。皆仕事へ出かけたようだ。

 そんな中、リオラへ近づくものが一人。シンだ。

「よぅ、リオラの嬢ちゃん。あのアルジュエロのとか言う女。やべぇ! もうビンビンだ! 最後本気だしちまった! ギャハハハ! しかもあの女、首に剣添えられて笑ってやがった! ありゃ低ランクのままはもったいねぇ! 少なくともBの下限はあるぜぇ?」
「わかりました。Cからは試験をしなければなのでDまであげておきますね」

 アルジュエロ曰く世紀末モードのシンに、ごく普通に対応するリオラ。どこかシュールな光景だ。しかしこれはいつもの事なので誰も突っ込まない。

 リオラはそれとなく食事をしているアルジュエロを<鑑定>して、<大剣術>スキルが上がっているのを確認した。



◆◇◆
 翌朝、冒険者たちがギルドへ仕事を漁りに来る時間。それはつまり、リオラがいつもカウンターに立っている時間。
 しかし今日の彼女は、二本の角を持つ大柄な男と二人、ある部屋にいた。

「――報告は以上です」
「ほぉ。なかなか面白いことになってんな? なんで昨日報告しなかったかってことは聞かないでおいてやろう」
「……ありがとうございます」

 なんて事はない。忘れていただけだ。それだけ彼女にとっては衝撃的だったのだろう。
 リオラがバツが悪そうにしているのにも関わらず、

「しかし、【転生者】ねぇ。時々話は聞くが、ほんとに居るんだな。ワッハッハ!」

 と、なんとも愉快そうな笑い声をあげるの男。
 その時であった。

「スタンピードだ!」

 そんな声が聞こえてきたのは。