「グガァァァァ!」
「ちっ!」
ここで決めたかったのですが、なんとあの鬼、もう使えないと悟った右手を犠牲に真っ二つとなることを避けました。
思わず舌打ちしてしまいましたが、これでこちらの優位は動きません。
そう油断したところで、私は鬼の剛力に殴り飛ばされました。
「がはっ」
軽いの脳震盪を起こしたらしくフラフラします。しかし追撃はさせません。
すぐさま[光球]を放ち、牽制します。
大したダメージはありませんが、目的は果たせました。
とここで、奴の剣に凄まじい魔力が集まっているのが見えます。
「最後の一撃ってわけね。いいわ、受けて立ちましょう。」
私も同様、ありったけの魔力を剣に込めます。繰り出すは大上段からの一撃。
「ハァァァァァッッ!!」
「グォォォォォッ!!」
バチバチと音を立て、互いの魔力が、全身全霊の一撃がぶつかり合います。
互いの剣は拮抗し、木々は吹き飛び、大地はえぐれ、そして――。
――キンっ
あまりの威力に耐えられなかった奴の剣は折れ、私の剣が奴を切り裂きました。
「……ありがとう、ございました。」
私は、死闘を演じた彼に礼をつげました。
戦いのなかで何度も、――彼が腕を犠牲にした時に、彼が剣にその最大の魔力を込めた時に、そして彼とその全てをぶつけ合った時に、私は、生きるとはなんたるかを見たのです。
私はどこか、楽観視していました。
この世界で生きることを、自分も含め生きる命を軽んじていました。
だからあんな無用心に森を歩き回れた。
だからなんの躊躇もなく殺し合いに快楽のみを求められた。
私は生きています。
この異世界で。
自覚せねばなりません。
たとえこの世界が夢見た、ゲームを思わせるものの多い世界であろうとも。
ここは、夢の世界でも、ゲームの世界でもない。
まぎれもない現実であるということを。
生きましょう。精一杯。
そして楽しみましょう。
今日奪った、このたくさんの鬼たちの死を、意味のないものにしないためにも。
――あ、ハイオーク確保しなきゃ。