まず翼に魔力を纏わせます。量は普段魔法を使う時と同じくらい。
からの、アイ、キャン、ふらぁぁああああああああああいいいいいっ!?
……うん、はい、魔力が多すぎました。あまりの急加速にちびるかと思いました。……ちびってませんからね? すぐに魔力供給を減らして上昇を止めましたし。
それにしても、ずいぶん高くまで上がりましたね。リムリアの街がはるか下にあります。
そのまま茜色に染まる街並みを眺めていると、バクバクいっていた心臓が徐々に落ち着いていくのが分かります。ここで、私は初めて街から目をそらしました。
そこにあったのは、どこまでも続く樹海と、澄んだ空気。さらに別の方向の遥か彼方には天を衝くような巨木が見えます。
おそらくは世界樹。
左右二つの夕陽に斜め後方から照らされたそれは、この距離からでさえまるで自ら光を放っているかのような存在感を感じます。
「ほぅ…」
美しい景色に思わずため息が漏れます。
私はそのまま暫く、これから自分が生きる事になるその美しい世界に見入っていました。
日の暮れようとしている頃、空に浮いたまま街から離れます。ドレスのおかげか、飛ぶのにほとんど魔力がいりません。思った方向に飛んでくれます。
そして、適当なところで森に降り、昨日と同量の薬草を採取してからリムリアに戻りました。
◆◇◆
ギルドで薬草を換金したあとは宿へ帰ります。五の鐘は暫く前に聞こえたので、もう夕食が食べられるはず。
星の波止場亭に着きました。案の定中から賑やかな声が聞こえます。
私も早く中に入って夕食へありつこうと思い、ドアノブに手をかけた時、ふと、二つの果実が目に入りました。
私、女になったんですよね。アレ、どんな感じでしょう。……今夜やってみましょう。
◆◇◆
食事を終え部屋に帰った私はドアを閉め、急ぎ鍵をかけます。雨戸も閉め、夕食をたべながら作ったある魔法を発動。
ふっふっふ。防音の魔法です! 〈風魔導〉でチョチョイのチョイでしたよ。
それでは、今夜はお楽しみしましょうか。
◆◇◆
素晴らしかったと言っておきましょう。
男だった時と全然違います。
まさか、あんな事になるなんて……。