「さて、戦闘訓練に移ろう。そこに刃引きした武器があるから好きなやつ持ってこい」

 そういって彼は訓練場の隅を指します。そこには長剣やメイス、大楯、さらには巨大なチャクラムらしき物まで、様々な武器が入った木箱がありました。

 さて、何を使いましょうか。
 今朝確かめた膂力を活かすなら重量級の武器が良さそうです。

 そう思って戦鎚やハルバードを手に取ります。
 しかし、打撃なら素手で十分ですし、何より素材を駄目にしてしまいそうです。ハルバードも、前世ならともかく今現在の私に扱える気はしません。スキルがあるなら話は別ですが。

 よくよく考えてみると、攻撃手段は魔法で十分なんですから、武器は魔法が効きづらい相手への手段としてあればいいという程度なんですよね。
 そうなると身を守る盾として使えた方がありがたいです。

 ……巨大チャクラムが気になる。
 褐色美少女アマゾネスになってたら間違いなく手に取っていたであろう形状をしています。
 なかなかロマンを感じさせますが、隙間があるので盾としては微妙ですね。

 その強烈な誘惑を強き魂をもってねじ伏せ、大剣を手に取ります。
 刀剣の心得は、受験戦争に身を投じる前に祖父から習っていたので一応あります。刀以外は嗜む程度ですが。
 刀と違い、“斬る”というより“叩き切る”西洋剣、それも重い大剣だと、刀のソレは活きるものではないと思っていましたが、私の今の力なら受流すくらいには流用出来そうですね。
 これは決まりです。

 私が悩んでいる間にさっさと得物を取って戻っていた同僚に合流します。

「よし、全員取ってきたな。今から一人ずつ、俺と模擬戦をしてもらう。武器の細かな指導は無理だが、他の部分に関しては満足のいくものを約束しよう」

 ということらしいので、最初の一人と世紀末銀行マンから距離をとります。戻ってきた順ということで、私は最後になりました。

 ちなみに彼の武器は片手用の、先端に槍のようなものがついた両刃の戦斧です。他にも顔が隠れる程度の大きさのラウンドシールドを腕につけていますが、期待を裏切りませんね。

 私のほかは四人。力、力いってた脳筋はなんと、短剣使いでした。そして一番弱かった。
 観察力と言っていた人は弓使い、シーフでしょう。
 三人目は魔法使いだそうで、敵の接近を許した場合を想定した杖術です。みごとなへっぴりごし。
 四人目は金の亡者。なんと四人の中で一番強い。
 まあ、私からすれば四人とも大して変わりませんね。
 彼らは模擬戦の後軽く指導を受けていました。

 そして私の番です。

「嬢ちゃんの細腕で大剣なんて振れるのか?」

 銀行マンが何か言ってきたので軽く一振りして問題ないことを示します。

「なるほど、問題なさそうだ。それに武術の経験があるな?」

 おや? 今のでそこまでわかりますか。

「始めてもいいですか?」

「ああ、来い!」