ギルドの裏にある訓練場に入ります。
 訓練場はだいたい高校のグラウンドぐらいありますね。周囲は結界に覆われ、その向こう側に壁も見えます。
 ちなみに壁の鑑定結果です。

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<アダマンタイト> 伝説 (普通)
魔力を弾く性質をもった金属。
密度が非常に高いため、非常に硬いが、重い。
展性、延性が低い割に粘り気が強いので、耐久性はヒヒイロカネに次いで高い。
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 やはりありましたね。アダマンタイト。ファンタジーの定番です。
 ヒヒイロカネも確定。
 これはオリハルコンもありそうですね。


 さて、すごくぴっちりした人が居るらしいのですが………。

 いましたね。いましたけど、どうしましょう。すごく行きたくありません。
 だってあそこに居るの、世紀末銀行マンですよ?
 人違いであることを期待して周りを見渡しますが、他にそれらしき人は見当たりません。
 後からきた新人らしき人たちも彼のところへ集まっていきます。

 ……いきましょう。
 例え世紀末でも、講師を任されているなら問題ないはずです。……たぶん、きっと、ないといいなぁ。

 意を決して近づきます。
 心の準備はたどり着くまでに済ませます。――よし! ドンと来い!

「よし、集まったな。これから初心者講習を始める。俺は今回講師を務める、Aランクのシンだ。」

 …………あれ?もしかして別人?
 いえ、あの七三分けに、神経質に揃えられた端々は世紀末銀行マンで間違いありません。
 どうゆうことでしょうか?

「さて、お前らも知っている通り、ここ、リベルティア王国は東大陸最北にある未開地、『竜魔大樹海』に接している」

 いえ、知りませんでした。
 なんて言ったらヒャッハーしてくれるでしょうか?

「特にこのリムリアは辺境にある街として、最前線の砦の役割を持っている。
今日はこの街で冒険者をしていく上で必要な事を学んで貰いたい。」

 予期せず国と街の名前が知れました。ラッキーです。
 とか考えている間にも、シ、シ、シ……もう世紀末銀行マンでいいでしょう、話は続きます。

「まず、冒険者にとって一番大事なことはなんだと思う?」

 はて、なんでしょう?

「力だろ!」
「いや、観察力だな」
「はぁ? 何言ってんだおめえら。金に決まってんだろ」

 なにやら周りが色々言ってます。
 二番目の人に私も賛成ですね。

「残念だが、どれも違う。一番大事なのは、生き残ることだ。生き残らなきゃ金も手に入らない、持っていても意味がない。特に、リムリアで仕事をする場合、森で何か異変があったらなんとしても生き延びて情報を伝えなければならない。さもなければ、街、いや国ごと滅びるかも知れない。その為の観察力であり、力だ」

 なるほど、道理ですね。

「だからお前ら、冒険するんじゃねぇぞ」
「冒険しねぇで冒険者があるか!」

 金が大事な彼が叫んでます。
 少々耳に辛い声量ですが、私も"冒険"者なのに冒険しないのはどうかと思いますね。成長も無さそうです。

「勘違いしてるみたいだな。俺が言ってる冒険ってのは、無謀な真似って意味だ。準備を怠り、勝算が万に一つもない事をしても死ぬだけだぞ? むしろ勝てる可能性が少しでもあって、最悪でも逃げられる状況ならガンガン行くべきだと俺は思っている。もちろん準備を万端にした上でだがな。挑戦は人を成長させるが、冒険は寿命を縮めるだけだ。そこらへん、しっかり心に刻んどけよ?」

 ……ふむ、なるほど。意外といいこと言いますね。世紀末銀行マンのくせに。