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――ここら辺でいいでしょう。
門からさほど離れておらず、道や門からはよく見えないところにひらけた場所がありました。
ここなら魔物も出ません。土が踏み固められているので誰かが普段から使っているのかもしれません。
あと、仮の身分証も銀貨1枚と一緒に門兵さんに渡しておきました。
さて、まずはどのくらいの身体能力があるかですね。耳や鼻がいいのはもうわかっていますが、チカラが強いというのがどの程度かわかりません。目についた木を軽く殴ってみます。
(ドゴンッ!)
……ええっと、クレーター?
大人が二人手を繋いでも少し届かないくらいの幹を持った大木だったのですが、クレーターできちゃってますね……。
え? こんなのがそこら辺にいるんですか? 怖くない? だってジャブでクレーターですよ? 『真祖』だからですか?
……まあ力が強いのは悪いことではありません。女としては微妙かもですが。
全力も試しておいた方がいいですね。どうなるかが怖くて全力で殴れず殺されちゃいました、では話になりません。
……すぅ……はぁ、いきます。
(バギッ! ドゴベキッ! ガンッ!)
……今度は心の準備ができていたので大丈夫です。たとえ折れて吹っ飛んだ木がその先でもう一本折りつつさらに飛んで行っていたとしても、遠い目なんてしていませんよ。はい。
……蹴り、はもういいですか、対人は全力で加減しましょう。
大丈夫です。蹴りのほうが得意ですから。ええきっと。
気を取り直して、次は魔法ですね!
ええ、やっと魔法らしい魔法です! 講習を聞いてからやるべきかもしれませんけど、知識は発想を狭める可能性もあります。
まず色々やってみるべきでしょう! 決して楽しみ過ぎてとかじゃないですからね?
早速やってみます。たしか、イメージが大切って色んなラノベで言ってたはずです。
森の中ですから、水魔法から試してみましょう。魔力を動かしつつ、指先から水が勢いよく吹き出すところを想像します。
水圧で金属を切り裂くアレをイメージして……でた! けどまだ弱いですね。圧縮圧縮、むむむむ!
(ドバッ!)
おぉ! できました! 地面を抉る高圧水流! 学習した私はちゃんと地面に向けてます。
その後いくつか魔法が使えるようになりました。真空の刃を飛ばすバ……エアカッター、着弾後爆発する火の玉を飛ばすメ……ファイヤーボール、土の塊を飛ばすクレイボール、レーザーで焼き払うシャインレーザー、闇のエネルギーを飛ばすダークボール、さらに光以外の属性を矢や槍よ形にして飛ばす〜アローと〜ランスです。初めの魔法はアクアレーザーと命名。
いくつかわかったこともありました。
アクアレーザーとシャインレーザーを除く魔法は、一度体外で純粋な魔力のまま形成してから属性魔法に変換した方が効率がいいです。
レーザー系も体外の魔力の塊から遠隔起動が可能。ただし手から直接出すより若干発動が遅いです。状況で使い分けましょうか。
あと、私は闇系統と光系統の魔法が得意です。闇は『吸血族』だからでしょう。光は、<神聖属性適正>でしょうか?
また、魔法で生み出したものは残らないようです。ただこれはどうにかできそうな気がします。