【#8】
年が明けてから結音のセカンド・シングルとなる『虹色の世界』が週間ランキングで1位を獲得し、初めて生放送の音楽番組にも出演した。
本番中、最初はかなり緊張していたけれど、歌が始まったとたんに素晴らしい歌を披露した結音はさすがだと思う。
2月からは4月に開催が決まったコンサートに向けて本格的に動き出した。
結音が提案したスプリング・ガーデンをもとにセットリストや衣装、演出など準備に追われ、あっというまに時が過ぎていった。
飛ぶように過ぎていく日々の中、ついに迎えたコンサート当日。
会場は満員御礼で、関係者席には心音のご両親もいる。
結音にとっては、初めての千人規模のソロステージだ。
最初は最後までしっかり歌いきれるか少し心配だったけど、オープニングから結音のコンディションは絶好調だった。
客席も温かい空気に包まれていて、音楽で心が繋がっているのがステージからもよくわかる。
鳴りやまない手拍子に応えてアンコールの楽曲『虹色の世界』を演奏した時は、今日一番の一体感だった。
「結音、お疲れ様。最後までよく頑張ったな」
ステージ袖に残っていた結音に声をかけると、ずっと我慢していたのか泣き出してしまった。
「なんで泣いてるんだよ」
「だって、すごく感動して……」
結音の純粋な心と涙がたまらなく愛しくなって、思わず抱きしめる。
「俺も結音の歌にすごく感動したよ。これからもずっと心音の歌を聴いていたいって思った」
「これからもずっとそばにいてくれますか?」
「もちろん」
結音の言葉に笑顔で即答して、ゆっくり顔を近づける。
一瞬戸惑いながらも目を閉じてくれた結音に、同じ気持ちでいてくれて良かったと思った。
そっと唇に触れた温もりはとても優しくて、幸せな気持ちで満たされていく。
これからもきっと、君がいれば、世界は虹色に輝く。