未知のクリスマスダンジョンは、海外よりも少し高い『A級+』認定された。
 理由は雪ダルマとシカ魔物が強すぎる事、中ボスのサンタクロースが未知数だからだ。

 望んだものを与えてくれる、というものは素晴らしいものの、よく考えるの俺たちの攻撃を受け止めるなんて尋常じゃない。
 これから更に政府関係の探索者が調べていくとのことだ。

 だが俺たちの貢献はなかなかだったらしく、後々金一封がもらえるらしい。お小遣いっ!!!

 サンタからのプレゼントは戦利品としてもらえることになり、無事にもみの木を持ち帰ることができた。

 ただ流石に持てなかったので、御崎に動かしてあげる(サイコキネシス)で輸送してもらったが。

 その日はくたくただったので庭に置いて就寝。

 明日、もみの木を設置して飾りつけしようと話がまとまった。

 ……おやすみなさい。

 ――――
 ――
 ―

「ん……あれ、みんなどこいった」

 うちの家は昔ながらの布団だ。
 いつもは川の字で寝ているのだが、おもちも田所も、グミもいなかった。

 庭か? それともミニダンジョンで遊んでるのかな。

 ふぁああとあくびをしていたら、頭の上に何かあった。

 白い、箱。

「……なんだこれ。手紙?」

 そこには、御崎サンタより、と手紙が置いてあった。

 中を改めると文字がびっしり、ではなく、一言だけ書いてる。

『メリークリスマス』

「……なんだろうこれ」

 でも思わず笑みをこぼした。人生初めてのクリスマスプレゼントだ。
 中を開けると、出てきたものに思わず首を傾げた。
 でも、綺麗だな、この赤い――。

「キュウー!」
「お、おお!? 何してたんだ!? え、こっちこっち?」

 突然現れたおもちに手を引かれる。羽、モフモフで気持ちいい。
 縁側から庭へ移動。ダンジョンの中に来て、ということらしい。

 階段を下りていくと驚きの光景が目に飛び込んできた。
 なんと雪が降っている。
 俺が昨日サンタからもらったもみの木が設置されていて、綺麗に雪帽子が被っている。
 さらに綺麗な装飾もつけられていた。

 真ん中には、机と椅子、ケーキや七面鳥のご馳走がいっぱい。

 まず出迎えてくれたのは、妖精のドライアドだった。

「ご主人ちゃま! クリスマスでちゅよ!」
「ドラちゃん、もしかして雪を降らせてくれたのか?」
「はいでちゅ! 空気中の水蒸気を集めて氷の結晶として落ちてまちゅ! すみまちぇん、こんなことしかできなくて!」

 相変わらずサラリと凄い事を言っている。
 原理はよくわからないが。

「その通りだ。さすがドラちゃんだな」
「はいでちゅ!」

 視線を戻すと、御崎に雨流、田所、グミがいる。なんだ、俺以外は全員そろってたのか。
 そして、見慣れた黒執事佐藤さん。

「おはようございます。ダンジョンの調査、お疲れ様でした」
「いやいや、こちらこそ参加させてくれてありがとう。佐藤さんも手伝ってくれたんだ」
「皆様が山城様へいつもの感謝を伝えたいと言っていたので、私も是非にと」

 感謝と言われても何もしてないんだがな。
 むしろ俺はもらってばっかりだ。

「山城。お久しぶりです」
「ふぇ? ミ、ミリア!?」

 後ろを振り返ると立っていたのは雨流の大人版。
 名前は雨流・ミリア・メルエット。

 そう、セナの姉である。

「ひ、久しぶりだな」
「どうして私のメッセージを返してくれないんでしょうか? 毎朝、毎昼、毎晩送っていますが」

 知り合ってからというもの、ミリアからは今日デートしませんか? と毎日送ってくる。
 無視しているわけではないが返事が遅くなっていた。後、なんで俺を気に入ってくれているのかわからない。
 ありがたい、ありがたいが、流石に超有名人と出かけるのは気が引けるのだ。
 彼女は財閥の娘であり、さらに雨流の姉だからなあ。

「ご、ごめん忙しくてな!?」
「そうですか。でも今日はたっぷりお話しましょうね」
「は、はい!」

 雨流と違って大人だ。でも前にプリンたべられたって激怒してたっけか?

「鼻の下、いい感じに伸びてるわねえ」

 すると御崎が俺を睨んでいた。なんで!?

 席に座ると、さっそく佐藤さんがシャンパンを入れてくれた。
 もちろん大人だけ。御崎はプレゼントでもらった日本酒らしい。男らしいな。

「それでは山城様、お声をお願いします」
「え、おれ? ま、まあいいけど。――えー、なんかサプライズありがとな。驚いたし、でも嬉しかった。実は俺、昔からクリスマスがあんま好きじゃなかった。ずっと一人だったからな。でも、これからは違う。多分、毎年楽しみにすると思う。今日はもちろん、来年も一緒によろしくな!」

 その瞬間、色んな声が聞こえてくる。
 いや、配信を通している声だ。

 “メリークリスマス!”
 “イイハナシダナー”
 “いいこというね”
 “これだからアトリは好きなんだ”
 “カンパーイ!”

 何だ、いつのまに。

「視聴者も、メリークリスマス!」

 ほんと、皆に出会えてよかったな。

「キュウキュウ!」
「はいはい、ケーキ食べたいんだろ。ほら、おもち」
「キュウ!」

 嘴にクリームをつけるおもち、可愛すぎる。

 そういえばなんで御崎、俺に薔薇なんて送ってくれたんだろう。

「んー! やっぱり膝の乾杯は美味しいわねえ! ん、どうしたの? こっち見て」
「いや、何でもないよ」

 後で聞いてみるか。


 ◇

 薔薇(バラ)の花言葉。

 「愛情」「情熱」「美」「あなたを愛しています」
 ロマンチックな花言葉で、大切な人や尊敬する人などへの贈り物に適しています。

 ◇


 会社を辞めて不死身のフェニックスとのんびりスローライフ&ダンジョン配信生活をお読みいただき、ありがとうございます!
 このたび書籍版の発売に共いない『クリスマス編』を書下ろしさせていただきました!
 いかがでしたでしょうか? 楽しめて頂けたのなら幸いです!

 レーベルは『グラストノベルス』さま。
 楽天、Amazon、全国の書店様で本日から販売しております!
 
 書籍は全面改稿しているので見やすく、書下ろしもあります!
 是非お買い求めよろしくお願いいたします。