ダンジョンは昇っていくパターンもあれば降りていくパターンもある。
クリスマスダンジョンはツリーの風貌をしていたが下層へ降りていくみたいだ。
基本的の流れだと階層ごとに難易度が上がっていき、途中で中ボスのようなものが現れる。
それを倒すとまた難易度が上がって~という繰り返しだ。
最後にはダンジョンボスが待っている、というのがセオリーである。
この辺りはゲームっぽい。だからこそ万人受けするのかもしれないが。
迷路みたいになっていたり、罠もある。行き止まりだってあるのだ。
だがそれでもダンジョンには夢が詰まっている。
なぜなら、オーバーテクノロジーと呼ばれる魔道具がわんさか眠っているからだ。
かくいう俺たちも、テンションが上がっていた。
「すげえ、このソリ自動で動くぞ! 電気もガソリンも必要ない! 御崎ママ、これ持って帰ろうよ!」
三層。
俺たちはおもちゃ箱がいっぱいある謎の子供部屋にいた。
そして今俺は、ソリに乗っている。手綱を握ればなぜか勝手に動く。
「キュウキュウ!」
「おもち、最高だなこれ!」
“ワロタ”
“どういう原理で動いてんだw”
“おもち楽し気で可愛い”
“ソリに乗るアトリとおもち”
「道路交通法で絶対にアウトだしかさばるからダメ」
「あーくん、私も乗りたーい!」
“厳しい御崎w”
“仕方ない。ママは大体正論言ってくれるからいう事きこう”
“まだ口にチョコついてんぞw”
“セナちゃんが指くわて待ってて可愛い”
しかも速度もそこそこでる。
おもちは楽し気で、田所とグミは順番待ちだ。
雪ダルマの魔物やシカの魔物は恐ろしかったが、それ以降は特に危険を感じない。
もしかして一層だけ強いっていう逆パターンなのか?
となると、ここから先はずっと楽しい可能性があるな。
「キュウキュウ!」
「そろそろ満足か? みんなと交代するか?」
「キュウ!」
「おもちは優しいなあ」
おもちはソリから飛んで、空高く羽ばたいていった。ほんといい子だな。
さて、ブレーキ。
――ブレーキ?
「ちょ、どうやって止まるんだああああああああああああああああ!?」
“アトリイイイイイイイイイ”
“これはリコール決定”
“ただ滑ってただけなんじゃねえかw”
“しんじゃうよおおおお”
「もう……――動かしてあげる」
そのとき、ソリごと身体がふわっと浮く。
これは、御崎の魔法だ。
「あ、ありがとう御崎!」
「もう二度と乗らないでね。次行くわよ」
「えーみーちゃん、私まだ乗ってなーい!」
「ボクも……」
「がう……」
“いつの時代も母親とは厳しいものだ”
“田所ならどこぶつかっても無傷そう”
“危ないからダメです”
ちなみにおもちゃがいっぱい落ちていた。
デカイ水鉄砲とかデカイ人形とか。まだまだ遊べそう。
雨流が触ろうとすると御崎が止めて、俺が触れようとするとなぜかおもちに止められた。
「ダメよ。セナちゃん」
「あう……」
「キュウ」
「はいすいません」
そのとき腕時計型のアラームがピピピと響いた。
これは、新ダンジョンでの登頂限界時間だ。
ダンジョンは人間の欲を刺激する。
お菓子や自動ソリのように際限なく心をくすぐられ、気づけば魔物に囲まれていた、なんてありがちな話。
それもあって時間が決められているのだ。
今回は新ダンジョンの査定なので長く時間をもらっていたがそれでもここで終了。
また別の探索者に引き継ぎ、これを何度も繰り返した後、一般探索者も登頂可能になる、というわけらしい。
「もみの木、なかったなあ……」
「仕方ないわよ。そういうときもあるでしょ。思い出も沢山できたからいいんじゃない?」
「そうだな。そうかもな」
「最後にエントツポッキーだけもう一つ折って帰らない?」
「欲張り姉さんだな」
“ワロタ”
“ミサキちゃんがここまで気に入っているのめずらしい”
“よく考えたら一本食べきってる”
“食べすぎw”
“エントツポッキーって名付けるなww”
ダンジョンへの帰り道は様々だ。
来た道を戻る場合もあるし、手に入れた帰還石で入り口まで飛ばしてもらう場合もある。
もしくはどこかに水晶が置いてあり、手を翳すと戻ることも可能。
とはいえ、今回はアイテムがなかった。
「戻るしかないか」
「帰りにお菓子お菓子……お土産お菓子」
「ダメだぞ。まっすぐ帰るからな」
そのとき、ふと唸り声が聞こえた。
人間のような声だ。
なんだ? と思い見上げると、赤くてデッカイものが落ちてくる。
なんだこれは、血!?
いや違う。
――デカイサンタクロースが、振ってきた。
「――プレゼントはい”ら”ね”えがあああ!!!!!!!」
“な、なに!?”
“押しつぶされる。逃げて”
“ひゃあああああああああああ”
“サンタクロウス!?”
「みんな、離れろ!!!!!」
「――私がやる」
突如、ビル五階建てぐらいの大きさのサンタが下りてきた。
あやうくペッちゃんこになるところだったが、機転を利かせた雨流が俺たちを魔法で飛ばしてくれた。
ただ時間がなかったらしく突風で飛ばされたみたいに散り散りになる。
「キュウ!」
「ありがとうおもちッッ」
まずおもちが俺を空中で掴んでくれた。
田所は御崎を覆ってバルーンで浮かせている。
雨流は、グミに乗って移動していた。
“みんなのチームワーク凄い”
“セナちゃんナイス”
“中ボスかな?”
“ナマハゲみたいなこと言ってなかった!?”
コメントの通り、おそらくボスだ。位置的に考えると中ボスだろう。
デカイサンタクロース。白いひげがもしゃもしゃしていて、白い袋を抱えている。
人間型はめずらしいが、ダンジョンに限っては何が起きてもおかしくはない。
「――プレゼントはい”ら”ね”えがあああ!!!!!!!」
ボスは固有能力を使ってくることが多い。
それが今までに見たことない魔法、なんてザラだ。
これだけデカイとめちゃくちゃ強いだろう。
それでもボスには倒す価値がある。
理由は、美味しいアイテムがもらえるからだ。
そのとき、ハッと気づく。
あいつの言葉。このダンジョン。
――そうか。最後の最後で、もみの木ゲットできるかもしれねえな。
「御崎、雨流、おもち、田所、グミ――サンタを倒すぞ!」
だが全員の意思統一が大事だ。誰か一人でもやりたくないなら帰るほうがいい。
「「「「わかった。はーい! キュウ! ぷいにゅ! がううう!!」」」」
けどみんないい返事をしてくれた。
さあ、最後の締めといくか!
――――――――――――
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書籍、絶賛予約受付中です!
よろしくお願いいたします。
クリスマスダンジョンはツリーの風貌をしていたが下層へ降りていくみたいだ。
基本的の流れだと階層ごとに難易度が上がっていき、途中で中ボスのようなものが現れる。
それを倒すとまた難易度が上がって~という繰り返しだ。
最後にはダンジョンボスが待っている、というのがセオリーである。
この辺りはゲームっぽい。だからこそ万人受けするのかもしれないが。
迷路みたいになっていたり、罠もある。行き止まりだってあるのだ。
だがそれでもダンジョンには夢が詰まっている。
なぜなら、オーバーテクノロジーと呼ばれる魔道具がわんさか眠っているからだ。
かくいう俺たちも、テンションが上がっていた。
「すげえ、このソリ自動で動くぞ! 電気もガソリンも必要ない! 御崎ママ、これ持って帰ろうよ!」
三層。
俺たちはおもちゃ箱がいっぱいある謎の子供部屋にいた。
そして今俺は、ソリに乗っている。手綱を握ればなぜか勝手に動く。
「キュウキュウ!」
「おもち、最高だなこれ!」
“ワロタ”
“どういう原理で動いてんだw”
“おもち楽し気で可愛い”
“ソリに乗るアトリとおもち”
「道路交通法で絶対にアウトだしかさばるからダメ」
「あーくん、私も乗りたーい!」
“厳しい御崎w”
“仕方ない。ママは大体正論言ってくれるからいう事きこう”
“まだ口にチョコついてんぞw”
“セナちゃんが指くわて待ってて可愛い”
しかも速度もそこそこでる。
おもちは楽し気で、田所とグミは順番待ちだ。
雪ダルマの魔物やシカの魔物は恐ろしかったが、それ以降は特に危険を感じない。
もしかして一層だけ強いっていう逆パターンなのか?
となると、ここから先はずっと楽しい可能性があるな。
「キュウキュウ!」
「そろそろ満足か? みんなと交代するか?」
「キュウ!」
「おもちは優しいなあ」
おもちはソリから飛んで、空高く羽ばたいていった。ほんといい子だな。
さて、ブレーキ。
――ブレーキ?
「ちょ、どうやって止まるんだああああああああああああああああ!?」
“アトリイイイイイイイイイ”
“これはリコール決定”
“ただ滑ってただけなんじゃねえかw”
“しんじゃうよおおおお”
「もう……――動かしてあげる」
そのとき、ソリごと身体がふわっと浮く。
これは、御崎の魔法だ。
「あ、ありがとう御崎!」
「もう二度と乗らないでね。次行くわよ」
「えーみーちゃん、私まだ乗ってなーい!」
「ボクも……」
「がう……」
“いつの時代も母親とは厳しいものだ”
“田所ならどこぶつかっても無傷そう”
“危ないからダメです”
ちなみにおもちゃがいっぱい落ちていた。
デカイ水鉄砲とかデカイ人形とか。まだまだ遊べそう。
雨流が触ろうとすると御崎が止めて、俺が触れようとするとなぜかおもちに止められた。
「ダメよ。セナちゃん」
「あう……」
「キュウ」
「はいすいません」
そのとき腕時計型のアラームがピピピと響いた。
これは、新ダンジョンでの登頂限界時間だ。
ダンジョンは人間の欲を刺激する。
お菓子や自動ソリのように際限なく心をくすぐられ、気づけば魔物に囲まれていた、なんてありがちな話。
それもあって時間が決められているのだ。
今回は新ダンジョンの査定なので長く時間をもらっていたがそれでもここで終了。
また別の探索者に引き継ぎ、これを何度も繰り返した後、一般探索者も登頂可能になる、というわけらしい。
「もみの木、なかったなあ……」
「仕方ないわよ。そういうときもあるでしょ。思い出も沢山できたからいいんじゃない?」
「そうだな。そうかもな」
「最後にエントツポッキーだけもう一つ折って帰らない?」
「欲張り姉さんだな」
“ワロタ”
“ミサキちゃんがここまで気に入っているのめずらしい”
“よく考えたら一本食べきってる”
“食べすぎw”
“エントツポッキーって名付けるなww”
ダンジョンへの帰り道は様々だ。
来た道を戻る場合もあるし、手に入れた帰還石で入り口まで飛ばしてもらう場合もある。
もしくはどこかに水晶が置いてあり、手を翳すと戻ることも可能。
とはいえ、今回はアイテムがなかった。
「戻るしかないか」
「帰りにお菓子お菓子……お土産お菓子」
「ダメだぞ。まっすぐ帰るからな」
そのとき、ふと唸り声が聞こえた。
人間のような声だ。
なんだ? と思い見上げると、赤くてデッカイものが落ちてくる。
なんだこれは、血!?
いや違う。
――デカイサンタクロースが、振ってきた。
「――プレゼントはい”ら”ね”えがあああ!!!!!!!」
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“ひゃあああああああああああ”
“サンタクロウス!?”
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あやうくペッちゃんこになるところだったが、機転を利かせた雨流が俺たちを魔法で飛ばしてくれた。
ただ時間がなかったらしく突風で飛ばされたみたいに散り散りになる。
「キュウ!」
「ありがとうおもちッッ」
まずおもちが俺を空中で掴んでくれた。
田所は御崎を覆ってバルーンで浮かせている。
雨流は、グミに乗って移動していた。
“みんなのチームワーク凄い”
“セナちゃんナイス”
“中ボスかな?”
“ナマハゲみたいなこと言ってなかった!?”
コメントの通り、おそらくボスだ。位置的に考えると中ボスだろう。
デカイサンタクロース。白いひげがもしゃもしゃしていて、白い袋を抱えている。
人間型はめずらしいが、ダンジョンに限っては何が起きてもおかしくはない。
「――プレゼントはい”ら”ね”えがあああ!!!!!!!」
ボスは固有能力を使ってくることが多い。
それが今までに見たことない魔法、なんてザラだ。
これだけデカイとめちゃくちゃ強いだろう。
それでもボスには倒す価値がある。
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そのとき、ハッと気づく。
あいつの言葉。このダンジョン。
――そうか。最後の最後で、もみの木ゲットできるかもしれねえな。
「御崎、雨流、おもち、田所、グミ――サンタを倒すぞ!」
だが全員の意思統一が大事だ。誰か一人でもやりたくないなら帰るほうがいい。
「「「「わかった。はーい! キュウ! ぷいにゅ! がううう!!」」」」
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さあ、最後の締めといくか!
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