「コニワトリさんの卵の質が良くなってきてまちゅ! おそらくだけど、ダンジョンが拡張したことで魔力が増えてきてるからではないでちょうか!」
「ありがとう、ただその分魔石が必要になるってことだね」
「でちゅ!」
ミニグルメダンジョン内、収穫物の質や量の確認をドラちゃんとしていた。
袋に入れていた魔石をゴソゴソと取り出し、ドラちゃんに手渡す。
「はい、どうぞ」
「いただきまちゅ!」
ゴツゴツと硬そうな赤い魔石を、ドラちゃんはバリバリと食べはじめる。
もうなんかすごい音だ。バリバリイイイイイって感じ。
「おいちいでちゅ~!」
「ははっ、口を切らないでくれよ」
これが魔石でダンジョンを安定させる一つの方法なのだ。
魔構築で壁に埋め込むパターンもあるが、ドラちゃんの魔力を向上させるほうが効率がいいらしい。
といっても思っていた以上に魔石の減りが早い。
グミがため込んでいた魔石もあったので確保できているが、肝心のダンジョンを制覇《テイム》してしまったせいで思ってた以上に稼げなかった。
ただ生産量は上がってきていて、ダンジョンの水路も川のように大きくなっている。
壁のチョコレートも味が増えて、ストロベリーとバナナ味も追加されていた。
「ペロペロ……んまっ」
「がうがう」
ちなみにグミちゃんのお気に入りは、カカオ薄めのバナナ濃いめのストロベリー少々だ。
なんかもう、スター〇ックスのカスタムみたいになってるな……。
「ふう、御崎はどこいった?」
「キュウキュウ」
「ぷいにゅっ!」
おもちと田所が、ダンジョンの入口を指さす。
指はないけど、なんかそんな感じだ。
お手洗いかな、と思っていたら、カツカツと歩いてくる足音が聞こえた。
なんか、いつもの音と違うような――。
「おかえ――……え?」
「あーくん……ぐすん……」
現れたのは、ピンクゴスロリータカチューチャパニエモリモリの雨流だった。
なぜか知らないが、目に涙を浮かべている。いや、泣いている。超号泣。
「ど、どうしたんだ? 佐藤さんは?」
「うぅ……うぇーん、あーくんー……!」
突然駆け寄って来て、俺に抱きしめダイブ。
あまりの強さに倒れ込んでしまうが、それでもお構いなく頭を擦りつけて雨流が号泣し続ける。
「お、おいどうしたんだよ!?」
「うぇーーーん」
そしてタイミング良く? 悪く? 御崎が戻ってきた。
「ちょ、ちょっと御崎なんとか――」
「え? セナちゃん? って、なんで抱き着いてるの!?」
「うぇーーーん、あーくん……」
「いや、こいつが!?」
「なんで泣いてるの? 一体阿鳥何したの!? 」
御崎は”動かして”あげるを発動。
力の手加減していないのか、あたり一帯が浮く。
「ぷいにゅ~♪」
「キュウキュウ♪」
「が、がう?」
おもち達は楽しいらしい。まるで無重力状態だ。
いや、アトラクションじゃねえよ!?
「ち、ちげえーって! なあ雨流、説明してくれ!」
「あーくんあああああああああああああ」
結局、俺たち全員は長い間空中に浮いた。
モンスターたちは大喜び、俺は困惑、雨流は号泣。
状況の説明に随分と時間がかかったのだった。
◇
「はいセナちゃん、ストロベリーチョコレートで作ったお菓子よ」
「わわ、ありがとう!」
ようやく雨流が落ち着いた所で自宅に戻って、御崎が新開発中のお菓子を差し出した。
ちなみに価格は350円(税抜き)で出す予定。
「すごい美味しい……」
「ふふふ、良かったわ」
こう見えて御崎はお菓子作りが上手だ。メイクもばっちりだが、いかんせん言動がおじさんぽ――。
いや、今はそんなことはどうでもいいか。
「それで、なんで泣いてたんだ?」
「えっと……お姉ちゃんが……」
お姉ちゃんと言う単語に一瞬疑問が浮かんだが、雨流の姉のことか。
名前は確か、雨流・ミリア・メルエット。
佐藤さんに聞いたことはあるが、ネットでもチラっと見たことがある。
仲が悪いって話だが……。
「喧嘩したのか?」
雨流は、首をブルブルと横に振る。
「喧嘩なんてそんな優しいもんじゃない。私を――殺すつもりなの」
その瞬間、戦慄が走った。
殺す? 姉妹で? そんなわけ……いや、でも雨流の強さは重々承知している。
大人しかいない窃盗団に対しても負けるわけがないと豪語した雨流だ。
それが泣くほど怯えるなんて……どんな姉だ?
思わず御崎と顔を見合わせる。どうやら同じ気持ちのようだ。
「ヴィルさんはどうしてるの? 殺すなんて流石に止めるでしょう?」
「佐藤は雨流家の執事だから、私の味方になってくれているけど……お姉ちゃんには……勝てない」
あの佐藤さんですら勝てない姉ってどんな化物《モンスター》だよ!?
死のダンジョンで返り血一つないんだぞ……。
「怖い……」
だが雨流は震えている。色々聞きたいことはあるが、それは後でいいだろう。
彼女は怖くて逃げだしてきた。頼れるのは俺たちしかいないのだ。
「まあ、事情はわかった。とりあえず風呂に入ってこい」
「え? お風呂って」
「さっきダンジョンで服が随分と汚れただろ。今日はここに泊まってけよ」
「……いいの?」
「その代わり、おもちや田所、グミと遊んでやってくれよ」
御崎が微笑んでいる。雨流は、グミと初めての挨拶をしてから、おいでおいでと呼んだ。
頭をなでなですると、グミも嬉しそうな声を出す。
「グミ可愛い……本当にありがとう」
「ただし、佐藤さんには連絡させてもらうぜ。誘拐犯にはなりたくないからな」
「わかった。あーくん、大好き!」
突然嬉しそうに駆け寄り、再び抱きしめられる俺。
御崎が「ずるい……」みたい顔をしている。
まあ今は存分に撫でてあげることにしよう。
「よしよし」
こうして俺は、家出少女を匿うことになったのだった。
「ありがとう、ただその分魔石が必要になるってことだね」
「でちゅ!」
ミニグルメダンジョン内、収穫物の質や量の確認をドラちゃんとしていた。
袋に入れていた魔石をゴソゴソと取り出し、ドラちゃんに手渡す。
「はい、どうぞ」
「いただきまちゅ!」
ゴツゴツと硬そうな赤い魔石を、ドラちゃんはバリバリと食べはじめる。
もうなんかすごい音だ。バリバリイイイイイって感じ。
「おいちいでちゅ~!」
「ははっ、口を切らないでくれよ」
これが魔石でダンジョンを安定させる一つの方法なのだ。
魔構築で壁に埋め込むパターンもあるが、ドラちゃんの魔力を向上させるほうが効率がいいらしい。
といっても思っていた以上に魔石の減りが早い。
グミがため込んでいた魔石もあったので確保できているが、肝心のダンジョンを制覇《テイム》してしまったせいで思ってた以上に稼げなかった。
ただ生産量は上がってきていて、ダンジョンの水路も川のように大きくなっている。
壁のチョコレートも味が増えて、ストロベリーとバナナ味も追加されていた。
「ペロペロ……んまっ」
「がうがう」
ちなみにグミちゃんのお気に入りは、カカオ薄めのバナナ濃いめのストロベリー少々だ。
なんかもう、スター〇ックスのカスタムみたいになってるな……。
「ふう、御崎はどこいった?」
「キュウキュウ」
「ぷいにゅっ!」
おもちと田所が、ダンジョンの入口を指さす。
指はないけど、なんかそんな感じだ。
お手洗いかな、と思っていたら、カツカツと歩いてくる足音が聞こえた。
なんか、いつもの音と違うような――。
「おかえ――……え?」
「あーくん……ぐすん……」
現れたのは、ピンクゴスロリータカチューチャパニエモリモリの雨流だった。
なぜか知らないが、目に涙を浮かべている。いや、泣いている。超号泣。
「ど、どうしたんだ? 佐藤さんは?」
「うぅ……うぇーん、あーくんー……!」
突然駆け寄って来て、俺に抱きしめダイブ。
あまりの強さに倒れ込んでしまうが、それでもお構いなく頭を擦りつけて雨流が号泣し続ける。
「お、おいどうしたんだよ!?」
「うぇーーーん」
そしてタイミング良く? 悪く? 御崎が戻ってきた。
「ちょ、ちょっと御崎なんとか――」
「え? セナちゃん? って、なんで抱き着いてるの!?」
「うぇーーーん、あーくん……」
「いや、こいつが!?」
「なんで泣いてるの? 一体阿鳥何したの!? 」
御崎は”動かして”あげるを発動。
力の手加減していないのか、あたり一帯が浮く。
「ぷいにゅ~♪」
「キュウキュウ♪」
「が、がう?」
おもち達は楽しいらしい。まるで無重力状態だ。
いや、アトラクションじゃねえよ!?
「ち、ちげえーって! なあ雨流、説明してくれ!」
「あーくんあああああああああああああ」
結局、俺たち全員は長い間空中に浮いた。
モンスターたちは大喜び、俺は困惑、雨流は号泣。
状況の説明に随分と時間がかかったのだった。
◇
「はいセナちゃん、ストロベリーチョコレートで作ったお菓子よ」
「わわ、ありがとう!」
ようやく雨流が落ち着いた所で自宅に戻って、御崎が新開発中のお菓子を差し出した。
ちなみに価格は350円(税抜き)で出す予定。
「すごい美味しい……」
「ふふふ、良かったわ」
こう見えて御崎はお菓子作りが上手だ。メイクもばっちりだが、いかんせん言動がおじさんぽ――。
いや、今はそんなことはどうでもいいか。
「それで、なんで泣いてたんだ?」
「えっと……お姉ちゃんが……」
お姉ちゃんと言う単語に一瞬疑問が浮かんだが、雨流の姉のことか。
名前は確か、雨流・ミリア・メルエット。
佐藤さんに聞いたことはあるが、ネットでもチラっと見たことがある。
仲が悪いって話だが……。
「喧嘩したのか?」
雨流は、首をブルブルと横に振る。
「喧嘩なんてそんな優しいもんじゃない。私を――殺すつもりなの」
その瞬間、戦慄が走った。
殺す? 姉妹で? そんなわけ……いや、でも雨流の強さは重々承知している。
大人しかいない窃盗団に対しても負けるわけがないと豪語した雨流だ。
それが泣くほど怯えるなんて……どんな姉だ?
思わず御崎と顔を見合わせる。どうやら同じ気持ちのようだ。
「ヴィルさんはどうしてるの? 殺すなんて流石に止めるでしょう?」
「佐藤は雨流家の執事だから、私の味方になってくれているけど……お姉ちゃんには……勝てない」
あの佐藤さんですら勝てない姉ってどんな化物《モンスター》だよ!?
死のダンジョンで返り血一つないんだぞ……。
「怖い……」
だが雨流は震えている。色々聞きたいことはあるが、それは後でいいだろう。
彼女は怖くて逃げだしてきた。頼れるのは俺たちしかいないのだ。
「まあ、事情はわかった。とりあえず風呂に入ってこい」
「え? お風呂って」
「さっきダンジョンで服が随分と汚れただろ。今日はここに泊まってけよ」
「……いいの?」
「その代わり、おもちや田所、グミと遊んでやってくれよ」
御崎が微笑んでいる。雨流は、グミと初めての挨拶をしてから、おいでおいでと呼んだ。
頭をなでなですると、グミも嬉しそうな声を出す。
「グミ可愛い……本当にありがとう」
「ただし、佐藤さんには連絡させてもらうぜ。誘拐犯にはなりたくないからな」
「わかった。あーくん、大好き!」
突然嬉しそうに駆け寄り、再び抱きしめられる俺。
御崎が「ずるい……」みたい顔をしている。
まあ今は存分に撫でてあげることにしよう。
「よしよし」
こうして俺は、家出少女を匿うことになったのだった。