「多いな……」
御崎から頼まれた買い出しのメモを確認していると、思わず声が漏れた。
グミもすっかりうどん好きになったので、消費量が増えている。
なので、業務用スーパーでまとめ買いをしないといけないのだ。
「これ、持てるかな……」
俺の自転車《ベンツ》では限界の積載量かもしれない。
「キュウ?」
いくらおもちは空が飛べるとはいえ、俺を運んでくれるわけではない。
田所ロボットならなんとかなるが、今は御崎とお出かけなので留守だ。
「がううう!」
「どうしたグミ」
先日俺たちの愉快な仲間に加わったグミが吠えている。
水龍というよりはすっかり犬化しているが、どうやら背中に乗れということらしい。
「え、でも流石に無理じゃないか……?」
今現在、グミはトイプードルくらいの大きさしかない。
見た目は龍だが、ミニ龍なのだ。
健全な社会人男性《ほぼニート》が乗れば潰れるんじゃなかろうか。
「がうう!」
「ほんとか……?」
大丈夫、と言っている気がする。
おもちも心配そうに見つめているので、俺と同じ気持ちらしい。
「じゃ、じゃあ乗るぞ。いいな!?」
「がう!」
どんとこい、らしい。
おもちは羽根の隙間から覗いて身体を震わせている。
それ、見たいけど見たくないときにするやつ!
おそるおそるちょこんっと乗った瞬間、想像以上の安定感だった。
……そうか、大きさは小さくなったが、実際の体積は変わっていないのか。は
「がう!」
どうだ、と言わんばかりに胸を張る。
ちなみにグミの身体から少し水分が漏れ出ているので、おしりはびっちょり濡れている。
水耐性(極)を発動することもできるが、これはこれで気持ちがいいので良しとしよう。
「でもどうやって進むんだ?」
「がうがう!」
するとグミは――ほんのちょっと浮いた。
「すげえ……、凄いぞグミ!」
そういえば初めて戦った時も浮いていた。
なんだろうあれに似ている。緑の三連光のホバー移動みたいな感じだ。
それか遊園地のパンダ。
「よし、じゃあまずは業務用スーパーに行こう。いいのか?」
「がう!」
「キュウ!」
どうやらおもちもようやく安心してくれたらしい。
とはいえ、歩幅を考えるともの凄い時間がかかりそうだ。
のんびりいく――かああああああああああああああああああああ!?
「がううううううううううう」
「ちょ、ちょっと、は、はやすぎるんだがああああああああああああああああああああああ」
グミが気合を入れた瞬間、足元に浅い水辺が出現し、泳ぐように進んでいく。
それは自動で形成されていく水の地面のようで、パシャパシャと泳いでいる。
にしても早い、早すぎる。
「がうううううう」
「も、も、もっとゆっくりいいいいいいいいいいいい」
早すぎて呼吸ができない――。
「ママ、あれなにー? おじさんが小さい竜の上に乗ってるー」
「見ちゃダメ! あれは会社を辞めてテイムした魔物を乗り物にしている極悪ニートおじさんなんだから! ほら、お尻も濡れてるでしょ! きっとお漏らししているのよ!」
「はーい、ママー」
なんか通りすがりにとんでもないことを言われた気がする。
気のせいだったらいいんだが……。
◇
「うどんも買ったし、ネギもおっけーだな。――ん?」
無事にびちょびちょになりながらも業務用スーパーに到着。
必要なものを籠にポイポイいれていると、グミとおもちがお菓子コーナーを見ていた。
「がうう」
「キュウ」
どうやら何か欲しい物があるらしい。
基本的にいつも健康重視の食事なので、余計なカロリーは抑えている。
まあでもたまにはいいか。
「どうした、何がほしいんだ?」
「がう!」
「キュウ!」
するとグミが指を差したのは《実際には見てるだけ》、『練って美味しい、こねこねこーね』だった。
対象年齢は五歳以上、カラフルソーダ味だ。
うん、絶対作れないね。
「ダメです。これはグミには作れないよ」
「がう! がーう!」
これが! 欲しいの! みたいな感じで叫ぶグミ。
前に友達の子供と遊んだ時を思い出した。
絶対に食べられない超辛口キムチを強請られたのだが、そんな感じだ。
大人はは絶対買いたくないけど、子供は絶対欲しいみたいな。
「キュウ!」
隣にいたおもちは、普段は変えないようなお高いお菓子の詰め合わせに羽根を指した。
前は50円くらいの美味しい棒一本だったのに知能が成長している……。
「これは……高すぎないか?」
「キュウキュウ」
そんなことない、配信も頑張ってるし、みたいな顔してる。
うーん、確かにそうだな。そうだけど……。
「がう!」
「う、うーん?」
「キュウ!」
「うーん」
はあ、パパどうしよう!
◇
「なにこれ『練って美味しい、こねこねこーね』って誰の?」
「あ、ああそれグミの――」
「こんなのグーちゃんが作れるわけないじゃない! どうしてこんなの買ってきたの!?」
案の定、帰った瞬間に御崎ママに怒られてしまう。
いや僕もそう思うんだけどね、グミがね、いや、ほんとグミがね、と言うと怒られるので素直にごめんなさいした。
「それにこんな高いお菓子も……」
「それはおもちが――」
「お会計したのは阿鳥でしょ?」
「はい……」
横にふと目をやると、おもちとグミが隅っこの物陰に隠れて様子を伺っていた。
ズルいぞお前たち! それにグミ、馴染むの早すぎだゾ!
「次からは気を付けてね」
「はいお母さん」
「……なんて?」
「何でもないです」
ようやく怒りの矛が収まって少し離れた瞬間、グミとおもちが笑顔で駆け寄って来る。
君たち賢すぎないか?
「がうがう!」
「キュウ!」
「ボクの負けだよ……」
まあでも、可愛い子供《魔物》たちだ。
このくらいは許してやろう。
「がう……」
そしてやはりグミは『練って美味しい、こねこねこーね』を作ることが出来なかったので、俺が作ってあげることになった。
それとお高いお菓子だが、翌日、おもちが空けられない戸棚に封じ込められていた。
「これは来客用ね、おもちゃん」
「キュウ……」
御崎に説得されて涙ぐむおもち。
甘やかす方がいいのか、それとも厳しくするのがいいのか。
うーん、子育《まもの》って、難しいな……。
PS.わがままそうに見える田所《次男》が意外と一番駄々をこねません。
「ぷいにゅっ?」
御崎から頼まれた買い出しのメモを確認していると、思わず声が漏れた。
グミもすっかりうどん好きになったので、消費量が増えている。
なので、業務用スーパーでまとめ買いをしないといけないのだ。
「これ、持てるかな……」
俺の自転車《ベンツ》では限界の積載量かもしれない。
「キュウ?」
いくらおもちは空が飛べるとはいえ、俺を運んでくれるわけではない。
田所ロボットならなんとかなるが、今は御崎とお出かけなので留守だ。
「がううう!」
「どうしたグミ」
先日俺たちの愉快な仲間に加わったグミが吠えている。
水龍というよりはすっかり犬化しているが、どうやら背中に乗れということらしい。
「え、でも流石に無理じゃないか……?」
今現在、グミはトイプードルくらいの大きさしかない。
見た目は龍だが、ミニ龍なのだ。
健全な社会人男性《ほぼニート》が乗れば潰れるんじゃなかろうか。
「がうう!」
「ほんとか……?」
大丈夫、と言っている気がする。
おもちも心配そうに見つめているので、俺と同じ気持ちらしい。
「じゃ、じゃあ乗るぞ。いいな!?」
「がう!」
どんとこい、らしい。
おもちは羽根の隙間から覗いて身体を震わせている。
それ、見たいけど見たくないときにするやつ!
おそるおそるちょこんっと乗った瞬間、想像以上の安定感だった。
……そうか、大きさは小さくなったが、実際の体積は変わっていないのか。は
「がう!」
どうだ、と言わんばかりに胸を張る。
ちなみにグミの身体から少し水分が漏れ出ているので、おしりはびっちょり濡れている。
水耐性(極)を発動することもできるが、これはこれで気持ちがいいので良しとしよう。
「でもどうやって進むんだ?」
「がうがう!」
するとグミは――ほんのちょっと浮いた。
「すげえ……、凄いぞグミ!」
そういえば初めて戦った時も浮いていた。
なんだろうあれに似ている。緑の三連光のホバー移動みたいな感じだ。
それか遊園地のパンダ。
「よし、じゃあまずは業務用スーパーに行こう。いいのか?」
「がう!」
「キュウ!」
どうやらおもちもようやく安心してくれたらしい。
とはいえ、歩幅を考えるともの凄い時間がかかりそうだ。
のんびりいく――かああああああああああああああああああああ!?
「がううううううううううう」
「ちょ、ちょっと、は、はやすぎるんだがああああああああああああああああああああああ」
グミが気合を入れた瞬間、足元に浅い水辺が出現し、泳ぐように進んでいく。
それは自動で形成されていく水の地面のようで、パシャパシャと泳いでいる。
にしても早い、早すぎる。
「がうううううう」
「も、も、もっとゆっくりいいいいいいいいいいいい」
早すぎて呼吸ができない――。
「ママ、あれなにー? おじさんが小さい竜の上に乗ってるー」
「見ちゃダメ! あれは会社を辞めてテイムした魔物を乗り物にしている極悪ニートおじさんなんだから! ほら、お尻も濡れてるでしょ! きっとお漏らししているのよ!」
「はーい、ママー」
なんか通りすがりにとんでもないことを言われた気がする。
気のせいだったらいいんだが……。
◇
「うどんも買ったし、ネギもおっけーだな。――ん?」
無事にびちょびちょになりながらも業務用スーパーに到着。
必要なものを籠にポイポイいれていると、グミとおもちがお菓子コーナーを見ていた。
「がうう」
「キュウ」
どうやら何か欲しい物があるらしい。
基本的にいつも健康重視の食事なので、余計なカロリーは抑えている。
まあでもたまにはいいか。
「どうした、何がほしいんだ?」
「がう!」
「キュウ!」
するとグミが指を差したのは《実際には見てるだけ》、『練って美味しい、こねこねこーね』だった。
対象年齢は五歳以上、カラフルソーダ味だ。
うん、絶対作れないね。
「ダメです。これはグミには作れないよ」
「がう! がーう!」
これが! 欲しいの! みたいな感じで叫ぶグミ。
前に友達の子供と遊んだ時を思い出した。
絶対に食べられない超辛口キムチを強請られたのだが、そんな感じだ。
大人はは絶対買いたくないけど、子供は絶対欲しいみたいな。
「キュウ!」
隣にいたおもちは、普段は変えないようなお高いお菓子の詰め合わせに羽根を指した。
前は50円くらいの美味しい棒一本だったのに知能が成長している……。
「これは……高すぎないか?」
「キュウキュウ」
そんなことない、配信も頑張ってるし、みたいな顔してる。
うーん、確かにそうだな。そうだけど……。
「がう!」
「う、うーん?」
「キュウ!」
「うーん」
はあ、パパどうしよう!
◇
「なにこれ『練って美味しい、こねこねこーね』って誰の?」
「あ、ああそれグミの――」
「こんなのグーちゃんが作れるわけないじゃない! どうしてこんなの買ってきたの!?」
案の定、帰った瞬間に御崎ママに怒られてしまう。
いや僕もそう思うんだけどね、グミがね、いや、ほんとグミがね、と言うと怒られるので素直にごめんなさいした。
「それにこんな高いお菓子も……」
「それはおもちが――」
「お会計したのは阿鳥でしょ?」
「はい……」
横にふと目をやると、おもちとグミが隅っこの物陰に隠れて様子を伺っていた。
ズルいぞお前たち! それにグミ、馴染むの早すぎだゾ!
「次からは気を付けてね」
「はいお母さん」
「……なんて?」
「何でもないです」
ようやく怒りの矛が収まって少し離れた瞬間、グミとおもちが笑顔で駆け寄って来る。
君たち賢すぎないか?
「がうがう!」
「キュウ!」
「ボクの負けだよ……」
まあでも、可愛い子供《魔物》たちだ。
このくらいは許してやろう。
「がう……」
そしてやはりグミは『練って美味しい、こねこねこーね』を作ることが出来なかったので、俺が作ってあげることになった。
それとお高いお菓子だが、翌日、おもちが空けられない戸棚に封じ込められていた。
「これは来客用ね、おもちゃん」
「キュウ……」
御崎に説得されて涙ぐむおもち。
甘やかす方がいいのか、それとも厳しくするのがいいのか。
うーん、子育《まもの》って、難しいな……。
PS.わがままそうに見える田所《次男》が意外と一番駄々をこねません。
「ぷいにゅっ?」