その後、オークを追いかけてきた探索者と呼ばれる人たちがやって来た。
 彼らは俺の肩に乗っているフェニックスに気づくと声を上げて慌てふためく。

「あっちぃ!? すげえ熱波だ!?」
「フェニックスだと? マジかよ、伝説級の魔物じゃねえか……」
「なあ、どうして君は触れられるんだ?」

 どうやら、フェニックスに近づくことすらできないらしい。
 汗だくだし、なんだったら触れるだけで火傷してしまいそうだ。

「フェニックス、ひとまず俺と契約してもらえないか?」
「キュウ!」

 言葉足らずだったが、どうやら理解してもらえたらしい。

「よし、スキル、炎中和《ファイアニュートラリゼイション》!」

 俺はフェニックスの炎を俺の魔力と同期させた。今は見た目こそメラメラと燃えているが、俺の魔力を通しているので周りが燃えることはない。
 元々は炎タイプの魔物をテイムするときに使うスキルだ。
 今は仮だが、ひとまず問題はなくなった。

 まさか炎耐性(極)が、こんな形で使えるとは……。

「すげえ……テイムしたのか? な、なああんた、触ってもいいか?」
「どうだろう……。フェニックスいいか?」
「キュイ? キュイキュイッ♪」

 どうやら、触るだけならOKだよ、みたいな感じだ。
 3人が羽根に触れると、フェニックスはくすぐったそうに鳴いた。

「すげえ、触っちまった!」
「俺、もう手洗わねえ……」
「後でSNSに書いていいか!?」

 そこまでなのか? そこまで凄いのか?

「キュイ?」

 何か、変な生き物に好かれちまったな……。

 そして驚いたことに、彼らはA級探索者パーティだった。
 逃げ出したオークを追いかけてきたらしく、怪我人が出なかったことをホッとしていた。

 ただ、それよりもフェニックスに興味津々だ。その中のリーダーが、説明してくれた。

「オークの討伐は君の手柄になるだろう。それで、ランクはどのくらいだ?」
「あ、ええと……すいません……登録してないんです」

 ランクとは、探索者の中で評価される順位だ。俺はそもそも資格を持っていない。
 もしかすると、結構まずいんじゃないのか?

「嘘だろ……それでオークを……凄いな、君の魔物は」
「あ、いや、俺の魔物じゃないんですよね、なんつーか、懐かれただけみたいな」
「伝説級の魔物が懐く? 聞いたことがないぞ……」

 どうやらかなり凄い出来事らしい。それと、嬉しいことにお咎めはなかった。
 ただ、一ヵ月以内に手続きを済ませないとだめだとのことで、俺は探索者の資格を申請しなければならない。
 問題は、それには多額の費用がかかるとのことだ。俺は……金がない。

「理由はどうあれ討伐するにはライセンスがいる。ただ、極まれだが、君みたいに順序が逆になる場合がある。この場合、特に費用はかからないよ」
「ま、まじすか!? じゃあ、タダってこと!? やったぜ、フェニックス!」
「キューン?」

 朗報だった。探索者になるには本来、車の免許を取得するぐらいの金はかかる。それが無料というのはありがたい。

「ただ……」

 しかし、リーダー格の一人がフェニックスを見て訝し気な顔をした。

「君の魔物ではないといったな?」
「え、えーとそうですね……懐かれてるだけで」
「その場合、俺たちが保護、もしくは討伐しないといけない。見たところフェニックスは温和そうだし、危険性はないだろう。そのため本来は保護になるんだが……わかるだろ? 君がいないと俺たちは近づくことすらできない。存在自体が危険となると……」
「もしかして討伐対象ってことですか!?」
「……そうなる可能性は高いな」

 まさかだった。いや、彼の言っていることは至極当然だ。
 フェニックスは俺と魔力を通わせているから被害が及んでいないだけで、もし炎耐性(極)がなければ、俺も触れることすらできなかった。

 けど、討伐だなんてあんまりだ。

「どうにかならないんですか?」
「こればっかりはどうすることもできない」
 
 くそ……ただ、俺は昔から仕事をやめて田舎に引っ越したいと思っていた。
 そう思えば、フェニックスと一緒に都会を離れるのもありか?

 魔物を飼った経験なんてないが、これも縁なのかもしれない。

 きっかけ、か。

「なあ、フェニックス。俺とこれからも一緒にいないか?」
「キュイッ! キュンキュンッ」

 フェニックスは俺の言葉がわかっているのか、嘴でまたキスをしてきた。痛い。

「ということになりました。すいません」
「いや、ありがたいよ。探索者は皆《みな》殺気立ってると思われるが、俺も温和な魔物は好きだからね。それに伝説級の魔物にお目にかかるなんて初めてだ。君は世界で初めてフェニックスをテイムした男になるだろう」

 なんか凄いことを言われている気がする。後ろにいる二人の探索者たちも、なぜか握手を頼んできた。A級って、日本でも数パーセントしかいない凄い人たちだよな? そんな彼らが俺に羨望の眼差しを?

「けどフェニックス、うちは貧乏だからな。贅沢はできないぞ」
「キューン! キュイキュイッ!」

 しかし何食べるんだろう。やっぱり鳥と同じかな?

「だったら動画配信なんてどうだ? 前にめずらしい魔物を配信している人を見たことがある。広告で金も稼げるだろう」
「配信ですか……」

 さすがに疎い俺でも、何度か見たことがある。だが、フェニックスをお金儲けの道具として考えるのは申し訳ない。できるだけ対等の立場で過ごしていきたいと思っている。

「それはやめておき——」
「魔物は君が思ってるよりよく食べる。それに炎で魔力消費しているだろうから、その分食欲も凄いだろう」
「よし、フェニックス! 俺と配信がんばるぞ!」
「キュウ? キュッキュッ! キューン!」

 首をかしげるフェニックスだったが、了解っ! と羽根をバサバサと広げた。
 そうだな、一緒に頑張るんだ。それなら俺たちは対等だ。

「じゃあ俺たちはギルドに報告に行くよ。ありがとう、伝説の魔物をテイムした男よ」
「あ、ああ。色々とありがとう」

 そうして俺は伝説級の魔物、フェニックスをテイムした男になったのだった。

「そういえば、フェニックス、さっきより魔力が上がってないか?」
「キュウ?」

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 初めての現代ファンタジーにもかかわらず沢山の星とフォロワーが!?
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