名古屋帯にするか、半幅帯にするか。
 お太鼓結びは苦手だし、やっぱり半幅帯かな。

 半幅の帯はリバーシブルになっている物が多い。結ぶ形の種類も多いし、紗都は裏の色がちら見えするように結ぶのが好きだった。
 紺色で引き締めてもいいし、赤系で華やかにしてもいいし、シックにグレーにしようか。

 半幅なら帯締めを使わない結び方もできるけど、やっぱり差し色に帯締めを使いたい。帯締めは何色にしようか。卵色もかわいいし、薄桃色も素敵。着物の水色に合わせて浅葱色にするのもいい、若草色も夏っぽくていいかも。
 かんざしはこの前買ったべっこう風の猫にしよう。

「あ、半襟つけないと」
 紗都は翌日のためにベージュのレースの半襟を買っていた。
 半襟は襦袢に付けるもので、着物を汚れから守ると同時にオシャレのポイントにもなる。真っ白だと清潔感があっていいし、いろんな素材や色柄のものも楽しい。

「半襟がベージュだから……」
 ひとつが決まると、連鎖するように帯はこれ、帯締めはこれ、と決めていくことができた。
「明日が楽しみ」
 ひと揃いをまとめ、半襟を襦袢につけてから紗都は眠りについた。



 翌日、紗都は紗の着物を着て待ち合わせの駅に向かった。

 流水文様の水色の着物にレースの半衿。紺色の地に白い雪輪文様の半幅帯をキャンディのような形に締めた。帯締めは卵色で、帯留めには大小のパールが輪になったブローチで代用した。足袋はレース製で、履物は草履ではなく下駄にした。

 まとめた髪に差したかんざしは猫。べっ甲に似たプラスチック製だ。手には大きなガマ口の和風バッグ。