休憩を終え、相良先輩とモールの中をブラブラして、少ししたら解散の流れになってきた。
まだ四時か。もう少し一緒にいたいけれど、相良先輩が帰ると言うのなら仕方ない。
もし彼が剣道を続けていたら、共通の話題があったのに。
過去の大会の話とか、中学時代で強かった人たちの話とか。
だけど今の俺たちには、共通点がほとんどない。
イケメンでちょっと不良な先輩と、超凡人な俺。
こうして並んで歩いていることが不思議なくらいだ。
モールの敷地から出れば、隣の総合病院の向こうにすぐに駅が見える。この奇跡のような時間も、やがて終わりを告げる。
「お前さあ、彼女とかいねーの」
ボソッと相良先輩が呟く。
「いるわけないじゃないですか」
俺は見た目もっさりした、一年中臭い剣道部。女の子にモテるわけもないし、これまで好きな人がいたこともない。
「だよな」
納得している彼の様子に少し傷つく。
いや、わかってますけどね。俺が誰かの特別な存在になることなんてありえないって。