「あとは髪だな」
「いっそ坊主にしようか……」

剣道強豪校は坊主頭の選手が多い印象だ。

「やめとけ。坊主でもカッコよく見えるのは、イケメンだけだ」
「先輩みたいな?」
「俺? バカ、もっと芸能人みたいなレベルのやつだよ」

相良先輩は照れたのか、俺の頭をぺんと軽くはたいた。

「相良先輩も芸能人みたいです。すごくカッコいい。完成された美とはこのこと」
「やめろ、キモイ」
「だって、全方向から見て綺麗なんですもん」
「アホか寒いわ」

腕をさする先輩。

なんでかなあ。本心から褒めているのに。俺が男だからかな。

「そういうやつは、こうしてやる」

いつの間にか奪われていた紙袋からワックスを出し、それを手のひらに塗り込んだ先輩が、腰を浮かせる。

そして俺の髪をわしゃわしゃと乱暴にかき乱した。