「剣道部にニキビ面が多いのは、面の中でいろんな雑菌が繁殖してるからだと思う。オエ」
「それは反論できないです」

いつもかぶる面は通気性が悪く、顎や額に当たるクッションに汗が染み込み、しかも自宅で水洗いなどができない。まさに菌の温床である。

ちなみに除菌スプレーをかけると、スプレーの香りが汗の匂いと交わり、とんでもない特級呪物が生まれてしまう。

防具専用の炭スプレーとか、業者にクリーニングを頼むとか、方法はいろいろあるのだけど、どれも結構高いし、気軽にできるものではないのだ。

ニキビはこれからも剣道部と共にあるだろう。

「いやだから、面倒くさがらずに洗顔しろ……なんだ、疲れたのか。どっか入るか」
「賛成です……」

相良先輩の言葉を一言一句聞き逃すまいとするのだけど、あまりに覚えることが多すぎて、頭がクルクルしてきた。

体力には自信があるけど、慣れない買い物で疲れたのは事実だ。

俺たちは空いているカフェに入り、それぞれ飲み物を注文した。今回は一番大きいサイズにするのをやめた。

俺がメモ帳に、今日のアドバイスを書き留めていいか聞くと、絶対君主から「好きにしろ」と許可がでた。