相良先輩が選んだ服を着て、試着室を出る。
いろいろな系統の服を試してみたが、結局シンプルイズベストということで、Tシャツとカーディガン、ワイドパンツにスニーカーというファッションに収まった。
どれも特に個性はなく、本当にシンプルなアイテムだが、母が選ぶものとはなにかが違う。
丈の長さとか、サイズ感とか、首周りの形とかで、全然違って見える。
「まあ、いいんじゃねえの」
相良先輩はそう言いつつ、満足そうな顔をしていた。
これで彼と一緒に歩いても、恥ずかしい思いをさせなくて済む。
俺はホッとして、にへらと笑った。
会計を済ませ、家から着てきた服とナップサックなどを紙袋に突っ込んで店を出る。
服とバッグを変えただけで、俺を指さして笑う人はいなくなった。
人は見た目が九割って聞いたことがあるけど、本当なんだな。
「服はいいけど、あとは髪と顔だな」
「顔の造形は変えられないですよう……」
「それは仕方ない。が、清潔にしているだけでだいぶ違うから」
相良先輩はそう力説し、俺を化粧品などを扱っているテナントに連れていく。
初めて入ったそこは女の人ばかりで、とても居心地が悪い。
ちんまりとした男性用化粧品コーナーで洗顔料と髪用のワックスを買い、すぐに退散した。