「ねえ、あれ見て。めっちゃイケメン」
「ほんとだ、イケメン。と、あれはなに? 下僕?」

クスクスと笑いながらこっちを指さしている。見えてるよ、お嬢さんたち。

そう、俺は下僕。美しき絶対君主に仕える、幸せな下僕なのさ。

「ぜんっぜん釣り合ってないもんね。下僕で間違いない」

ひときわ高い笑い声がした。

ずんと胸が重くなる。

俺はたしかに相良先輩の下僕だ。友人としては釣り合わない。そんなことわかっている。

だけど、俺のことをなにも知らない他人から言われるのは、やはり気分のいいものではない。

「うっせえな」

チッと相良先輩が舌打ちすると、女子中学生はビックリした顔でそそくさと去っていった。

まさか絶対君主が下僕のことをバカにされて舌打ちするとは思わなかったのだろう。

「ああいう生意気ブスの言うことは聞くな」
「ブスって言うのはよくないです」

ブスって言われたら、女の子は悲しいと思う。だから言っちゃダメなんだ。

反論すると、相良先輩に拳で肩を押された。

「自分をバカにしたブスを庇うな、バカ。どんだけお人よしなんだ」

彼は俺の腕をぐいっと掴み、顔を寄せてきた。

跳ねる心臓に追い打ちをかけるように、相良先輩は命令する。