しかし地区予選は厳しく、俺は一試合目で敗退。県大会には行けず。

相良さんとはどこのトーナメントでも当たらず、結局竹刀を交えることはなかった。

それでもどの試合場でも、俺は熱心に彼の試合を観察した。

彼の周りにはいつもたくさんの人がいて、少し話しただけの俺は、気後れして近づくことができなかった。

もっと強くなったら、話しかけに行こう。

そうして次の年の大会も、夢中で戦って気づけば終わっていて──三年生になった相良先輩は県大会三位という輝かしい成績で地方大会まで行ったと、ネットの画面だけで見た。

結局俺は三年になっても県大会二回戦負けという微妙な結果で終わり、そのあとにはすぐ受験が迫っていた。高校に進学したはずの相良さんの戦績を検索するどころではなくなっていた。

それでも、苦しい時にはいつも相良さんの微笑みが頭に浮かんだのだ。

大丈夫、焦らないでいい。

その言葉がどれだけ俺を落ち着かせ、励ましてくれたか。

あのとき、俺に声をかけてくれたあの人は、今も元気だろうか。