年の離れている姉は、結婚もしているし、人並みのオシャレができていた人だと思う。

しかし両親は仕事が第一で、休日のファッションなぞ楽であればいいのだという感じ。

しかも同年代の親より年をとっているので、今の若者の流行りもわからず、とりあえずサイズの合う服を買ってくれているのだろう。

「ああそう……そうだよな。お前、幸せそうだもんな。虐待されてるわけなかったか」
「はい、幸せです」
「なによりだ」

相良先輩は安心したように深く息を吐いた。

両親は俺を大事にしてくれている。じゃなきゃ剣道なんて金のかかるスポーツをやらしてはくれないだろう。

「相良先輩はまるでモデルさんみたいです」

襟のない白シャツに、半袖のゆったりした黒ジャケットを羽織り、黒ズボンは真ん中に折り目がついている。靴はスニーカーだがきれいで清潔感がある。

「いやこんなん普通だよ。特別オシャレってわけでもない」
「ええっ」

通り過ぎていく人々がちらちらと見ていくくらい、カッコいいのに。

こんな中途半端な丈のジャケット、見たことないよ。これが普通なわけない。

ははあ、もしや顔だな。相良先輩は普通のファッションでも、顔とスタイルがいいからモデル級に見えるわけだ。

むしろ、ごてごてと飾り立てるよりシンプルな装いのほうが、他人の目には好ましく映るのかもしれない。

「顔とスタイルが最高のオシャレってやつか……」
「なに目頭押さえてんだ。行くぞ。金は持ってるな」

顔面偏差値の差に悲しくなり、目頭を押さえていると、相良先輩に肩を叩かれた。

大丈夫。俺は特に趣味のない男。

今までの特に使い道がなかったお小遣いを貯めたものを持ってきたのだ。