うちの剣道部顧問は働き方改革という言葉を知らないらしい。

テスト期間以外は毎週土曜の午前にしっかり部活があり、完全に暇なのは日曜と祝日だけ。

というわけで土曜の部活から帰ってきた俺は、自室で気持ちよく昼寝をしていた。

「うんっ?」

突如耳元でブーンと長い振動が連続して起こり、ドキッとして体を起こす。

着信だ。友達とのやりとりはほとんどメッセージなので、着信は珍しい。

目をこすって画面を見た俺の心臓はひときわ高く飛び上がる。

画面に「相良」の文字が表示されていた。

「はいっ、小池ですっ」

反射的に画面をスワイプして通話モードにすると、受話器の向こうから不機嫌そうな声が聞こえてきた。

『おせえわバカ。俺からの着信は三コール以内に取れ。わかったか』

ああ、この無茶苦茶絶対君主加減。間違いなく相良先輩だ。