「大丈夫大丈夫。焦らないで。今のうちに面を」
「はいっ」

足元に置いてあった面を渡され、それを装着する。こっちはなんとかなりそうだ。

小手をはめて竹刀を持ったら準備完了。背中をポンと叩かれ振り返ると、相良さんがうなずいた。

「がんばって」

な、なんていい人なんだ……!

他校の選手の準備を手伝い、しかも励ましてくれて。

「ありがとうございます!」

ぺこりとお辞儀をすると、彼はにっこり笑って去っていく。

自分も個人戦があって忙しいのに。なんという心の余裕。

俺もあんな選手になりたい。

そうして挑んだ個人戦、なんと俺はリーグ戦二位で通過、決勝トーナメントもギリギリ通過して地区予選への切符を手に入れたのである。