「小池、忘れ物見つけたら明日くれ」
「あ、はい」
「じゃあ」

相良先輩は田邊さんには一瞥もくれず、俺とだけ会話をして去っていった。

歩き方を見る限り、足を庇っている様子はない。

勝負のあと、かなり痛そうだったから心配していたけど、大丈夫そうでほっとした。

「じゃあ、俺もこれで」

一応会釈して、去ろうとするが。

「ちょっと待って。きみは相良くんとどういう関係ですか? 動画で対戦されていましたよね?」
「あ……えと……」

なんと言えばいいんだろう。

ただの知り合いでもなく、友達と言うのはおこがましすぎるし、剣道仲間でもない。

ましてや絶対君主と下僕とは言えない。自分がそう思っているだけだし。

「相良くん、本当に復帰しないんですか? あんなに見事な剣さばきだったのに。きみ、どうかできませんか?」